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誰も助けてくれない

新作レンタル「ディス/コネクト」を鑑賞しましたので、
本日はこの作品のレビューをしたいと思います!

ぼっちの高校生を抱えた家族、一人息子を失って以来
関係が冷えきった夫婦、息子を重荷に感じるシングル
ファーザー、有料セックスサイトで自分を売り物にする
十代の家出青年、野心溢れる女性レポーター。
それぞれがネットの回線を通じて時に交じり合い、
思わぬ悲劇を生み出していく…というあらすじ。

ネットの発達がかえって孤独感を浮き彫りにしていく
という、現代社会にあっては最早避けられない光景を
テーマにしたのが本作品で、出会い系サイトやそれを
扱うTVショウのビジネスによる搾取、女性アカウント
なりすましによる些細な悪戯、スパイウェアによる個人
情報抜き取り等、ネットという舞台ではごくありふれた、
言い換えれば月並みな話題から話はスタートします。

目の前にいる家族のことが信じられず、タブレットを
片手にネットの向こう側に「何かがある」と信じて
熱中する人々が、一歩ずつ静かに破滅の階段を
昇っていく様の「ネットって怖いね」的な演出も、
スリラーチックで背筋に氷を当てられるような寒さを
覚えるのですが、これもあくまでテンプレ的な展開。

ここまで読んで「凡庸な作品なのか」と鼻で嗤うには
まだ早く、では結局本作を何が名作たらしめているかと
言えば、最終的にはネットという垣根を越え、「息子を
見失ってしまった父親」と「父親を感じられない息子」の
繰り広げる愛の交流の物語へと変容していき、それらの
過程の中でネットはあくまで道具に過ぎず、あくまで
それを扱うのは人間なのだとして、人間性の問題や
対決に焦点を当てていることにあると思います。

本作の登場人物は皆基本的にイノセントとして
描かれていて、それは純粋無垢という意味でも
無知蒙昧という意味でも当てはまり、真に邪悪な
魂を持つ者に食い物にされる一方で、弱い者が更に
弱い者を叩き笑いものにしたり、自らの罪悪感を薄める
ために責任を押し付ける他人を探し駆けずり回ったりと、
時には自身の中の邪悪をさらけ出すこともあります。
けれども誰もが心に悩みを抱えていて、自分を取り巻く
環境や自身をより良く変えようと努力しているのがまず
第一にあって、この「皆バカなんだけども決して悪い奴じゃ
ないし、一生懸命生きてんだよっ!」という姿こそがこの世の
真実のような気がするし、だからこそ本作がリアリティと
共に観客のシンパシーを大きく呼ぶ要因なのでは。

「本当は皆身体をぶつけあってお互いを感じあいたいのに、
それを怖がって影に隠れている」というテーマに沿って
描かれる群像劇的なドラマというと、ポール・ハギスの
「クラッシュ」が存在しますが、本作もその系譜にある
作品の一つと言っても差し支えないのではないでしょうか。
十代の青年が抱える疎外感や性衝動から生まれる
病理という意味では「ウォールフラワー」も連想し、
つまり本作もかなーり鬱々とした内容であることは
明白なのですが、単純にネットの問題に終始せず、
そこから脱却してヒューマンドラマへと昇華した手腕が
非常に素晴らしく、予想を上回る確かな名作でした。
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ピーターパンだからだ!

本日は「21ジャンプストリート」を鑑賞しましたので、
この作品のレビューをしたいと思いまーす!

頭脳明晰だが冴えないデブオタのシュミットと、運動神経
抜群の人気者だが致命的に頭の悪いジェンコは、全くそりの
合わない高校時代を過ごすが、7年後にポリスアカデミーで
再び顔を合わせると、お互いの力量を認め合う親友となる。
晴れて警察官となり、華々しい活躍を夢見る二人を待って
いたのは退屈なパトロールで、ようやく麻薬の売人を捕らえる
大金星を挙げるチャンスが到来してもドジを踏んでしまう。
署長に能なしの問題児と見られた二人は、丁度回ってきた
潜入捜査官の仕事を体よく当てはめられ、高校生として
学校に潜入し、麻薬の元締めを追うハメになるのだった…
というのがおおまかなあらすじ。

「ディス・イズ・ジ・エンド」や「LEGOムービー」を観て、
「ジョナ・ヒルもチャニング・テイタムもホモだよなー」と
思いながら彼らの経歴を追っていてぶつかったのが
本作品で、監督のフィル・ロードとクリス・ミラーの
経歴も今さっき調べてみたら「LEGO ムービー」と
同じコンビだったことが判明し、お前らが二人にホモの
イメージを植えつけた大体の戦犯かよ(「ディス・イズ~」の
セスも大概なので、彼らだけのせいというわけではない)!

さて、そんな前置きからわかる通り、本作も当然
「バッド・ボーイズ」や「ホット・ファズ」と同系統の、
「バディムービーというジャンルを銘打って行われる
おぞましいホモ行為的な何か」が描かれていくわけ
ですが、それはまず置いておいて、「高校生に扮して
潜入捜査を行う」という設定を最大限に生かしているのが
白眉であり、この時点で観客の心をガッチリキャッチ。

卒業も近い、残り僅かな青春時代を精一杯満喫
しよう!という路線がウケるのは「スーパーバッド」でも
証明済みで、なおかつ既に残念な高校生活を過ごした
二人の大人がもう一度同じ空間を体験できるという
タイムマシーン的なシチュエーションに加え、入学時に
二人の経歴がうっかり入れ替わってしまったために、
本来の自分とは違う他人を演じるハメにもなってしまう…
なんて多重構造はまさに「学園青春モノのあるある玉手箱」
状態で、一つ一つの要素はベタかもしれないけれど、
これら全てを上手く配置する手腕はお見事にして新鮮。

で、肝心のホモ映画要素ですが、これもバディムービー
としてのある種の定石をちゃんと踏んでいて、よく喋る
デブのジョナ・ヒルがコメディリリーフとして安定路線を
走りつつ、本来は硬派なキャラがウリのチャニング・
テイタムが得意の肉体派アクションもほどほどに、
どんどん落ちぶれてキャラが崩壊していくと同時に
嫉妬をこじらせたクレイジーサイコホモの側面を強めて
いくという展開が本当に観客の期待を裏切らない。

「ズコー!」という感じの間合いをよく読んだ小ネタを
散りばめることによる外し方が作品のテンポを
すごく良いものにしているし、これまた散りばめられた
ポップカルチャーがリアリティと親しみやすさにも貢献
(海外オタにはほんとに爆丸が大流行してんだ…)。
「LEGO ムービー」同様、とにかく観客に楽しんで
もらおう、ヒマをさせてはいけないという飽きさせない
ための配慮が見られ、エンタメの鑑のような存在です。

まあ、その、よくあるホモのバディムービーの一つ
ではあるんですが、ホモのバディムービーの中でも
かなり出来のいい部類のホモのバディムービーです。
エドガー・ライトやセス・ローゲンに並んで面白い
ホモ映画が撮れる監督と間違いなく言えるので、
「ショーン・オブ・ザ・デッド」、「ホット・ファズ」、
「ワールズ・エンド」、「宇宙人ポール」、「スーパーバッド」、
「スモーキング・ハイ」、「ディス・イズ・ジ・エンド」、
どれか一つでも好きなタイトルがあったらこれも観れ!

最悪の事態に備えよ

新作レンタル「プリズナーズ」を鑑賞しましたので、
本日はこの作品のレビューをしたいと思います!

ケラー一家は感謝祭の折り、友人のフランクリンに
招かれ、共にお祝いを楽しんでいたが、それぞれの
娘、アナとジョイが突如忽然と姿を消してしまう。
警察の懸命な捜索や、当時現場にあった不審な
RV車の持ち主・アレックスへの尋問から得られる
情報は皆無であり、捜査は早くも行き詰まりを見せる。
アレックスこそが犯人だと信じてやまないケラーは
業を煮やし、非合法な手段に訴えようとするのだが…
というのがおおまかなあらすじ。

幼女誘拐事件に端を発し、数珠繋ぎに浮かび
上がる様々な「罪」を描くことで、人間の業の深さを
知らしめるサイコ・サスペンス・スリラーの本作品。

ほんの少し目を離したという監督不行き届きが原因で
最愛の娘が攫われてしまったのに、最早妄想とも
言うべき執着心から犯人と「思わしき」男に対し理不尽な
暴力を振るうことが果たして正しいのかどうか…という、
逆「偽りなき者」のようなシチュエーションがまずあって、
その上で「俺だって娘が心配なんだ!俺だって正しい
事をしているんだ!」と主張し、自らの過ちを棚に上げ、
「お前らが怠慢だから捜査が遅れてるんだ!」と、
逆ギレ上等のモンスター以外の何者でもないバカ親が、
いたずらに警察の足を引っ張る様も描写していきます。

警察や司法に対して宗教や倫理、言い換えるならば
「刑法上の罪(crime)」と「宗教・倫理上の罪(sin)」は
分けて考えなくてはならなくて、社会というシステムに
身を委ねる以上はそれに従う必要があり、同時に全ての
結果は「神の采配」次第であって、一度激情に駆られ、
半分八つ当たりに近い状態で無闇に他人を傷つける
けだものと化してしまえば、両方の意味で罪を犯し、
人間ではいられなくなってしまうということを、我々は
本作を通じて学ばなければいけない気がします。

最終的には「試される信仰」や「人間性の対決」に
行き着くのが本作の面白いところであり、そうしてまた
最後の一線だけは越えなかったからか、或いは人に
愛されるだけの性質を持ちあわせていたからか、
なんとなく「神に愛された」ことで生き残ってしまうという
運命の采配を描いて幕引きというのも個人的には好き。
結果の後からあれこれ人間が理屈をこねてこいるだけ
なので、誰が死んでもおかしくない状況の中、結局は
何が正しかったのかも明確ではないという意味も含め。

ストーリー全体で見た場合、序盤に伏線をバラ撒きまくる
割には話の起伏に乏しく、終盤でパズルのピースが
一つ一つ繋がっていくまでに作品にかじりついていくのが
多少しんどかったり、かなり煮詰まったシナリオな分、
頭の中の整理も追っつかなかったりと、とりあえず雰囲気
重視で割りきって観ちゃうのも一つの手かもしれない…

キャストに関しては、キャラクター的にジェラルド・
バトラーと似た位置にいるヒュー・ジャックマンが、
ジェラルド演じた「完全なる報復」みたいな思い込みの
激しいクソコテ親父に扮して話をかき回してくれます。
冷静沈着な刑事役にはジェイク・ジレンホールで、
近年では「ミッション:8ミニッツ」や「エンドオブウォッチ」と
話題作にも軒並み主演として顔を連ねており、ハリウッド
スターの一人としての地位と同時に、キャラクターの
イメージも着実に固めつつあるのではないでしょうか。
何処か心に隙がある打たれ弱い男を演じさせたら
ピカイチのテレンス・ハワードも本作ではハマり役。
しかし今回個人的に一番の注目株はポール・ダノで、
同年の「それでも夜は明ける」で演じた嫌味な白人の
大工同様、「虫も殺さないような童顔してるけど裏で
犬とか猫を解体してそう」ってクレイジーサイコな
キャラクターを生かし、観客に困惑とヘイトを
巻き起こす最高に素晴らしい演技を見せてくれます。
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のクソ神父同様、
この人はなんかイラッとしてとりあえずブン殴りたく
なる役をやらせたら右に出る者はいないすぎる…

というわけで、要所要所はかなり面白いんだけど、
二時間半という長尺の映画で中盤まで多少ダレる
というところに若干の隙があるように思える本作品。
役者とか雰囲気が良く、複雑なストーリーやテーマを
内包しているという点も含め、若干カルト寄りかも?

やっぱり自由が一番ね

新作レンタル「それでも夜は明ける」を鑑賞
しましたので、本日はこの作品をレビューします!

19世紀の未だ奴隷制度の根強いアメリカ。
ソロモン・ノーサップは自由黒人の一人として、
妻や子供と共に幸せな暮らしを謳歌していた。
しかしある日ペテンにかけられた彼は、弁明の隙も
与えられず鎖に繋がれ、奴隷として売られてしまう。
家族と離れ離れにされ、裸に剥かれ、「商品」として
扱われるという、耐え難い屈辱を与えられた彼には、
南部の農場での過酷な労働が待ち受けていた…
というのがおおまかなあらすじ。

実在の人物、ソロモン・ノーサップが奴隷の現実と
その解放を訴えるがため、自らの体験談を元に
書き上げたという著作「12years a slave」を原作に、
スティーブ・マックィーン監督が映像化、見事数々の
アカデミー部門で賞を獲得するに至った本作品。

作品の舞台である1840~50年代はリンカーンが
奴隷解放運動を開始し、南北戦争へ至る60年代を
目前に控えた時期であり、奴隷制度への疑問を
抱く識者がアメリカ各地にもぽつぽつと現れ、また
ごく限られた黒人が「自由」の証明書を与えられ
白人と別け隔てなく接している傍ら、一方では
古くから続く悪習と悪法にしがみつき、奴隷は
「所有物」や「家畜」に過ぎないと残忍な私刑を
容赦なく振るう者も多いといった具合に、制度や
思想のぶつかり合いから、水面下では緊張の糸が
いつはち切れてもおかしくない一触即発の様相を
見せているという、混乱と変革の時期とも言えます。

そして本編では黒人奴隷たちの悲惨で過酷な現実を
これでもか、これでもか!とひたすらに淡々と描写し、
その上で主人公であるソロモンが帰るべき家のため、
己の教養を駆使し、如何にして12年の苦境を乗り
切ったかの姿までを描ききっているわけですが、
まるでモンド映画のような数々の残虐描写は、決して
誇張されているわけでも、白人を露悪的に描いている
わけでもなく、現実として行われていたという事実に
まず戦慄し、そして深く受け止めなければなりません。

プラットという名を与えられたソロモンは、ある時
白人の大工から不興を買った角でいびられた末、
あわや縄でくびり殺されるという事態に発展します。
彼はすんでのところで命を救われるも、主人の
指示が下るまでは誰も彼に手を出すことは叶わず、
彼は首に縄をかけられたまま、ぬかるんだ地面に
爪先立ちで約半日もの時を過ごすハメになります。
見ているこちらの方が窒息しそうな凄絶な光景ですが、
当時このような「人間じゃないから何をやってもいい」
という考えは当然のように横行していて、遊び半分で
耳や指を落としたり、暴行を加えて子を産ませるなど、
ペット相手にもそんな虐待はしないよね!?という
映像にはできない、もっと深い闇が日常茶飯事に
行われていたというのだから眩暈を覚えます。

捨てる神あれば拾う神ありで、ある人物の助けに
よってソロモンは奴隷の境遇から救われる奇跡の
ハッピーエンドを迎えるわけですが、これもそもそもは
彼が「自由黒人」の証明を与えられた星の下に偶然
生まれたからというだけに過ぎず、また彼一人が
救われたからと言って、未だ世界に根ざす人種
問題の全てが解決したわけではありません。
では何が重要なのかと言うと、やはり我々人間
一人一人が目の前にある事実と現実を受け止め、
考えるということにあって、本作は映像を通じその
問題の一つを提示してくれたということになります。

かつてキング牧師が差別撤廃を訴え、無抵抗
主義を貫いた時、彼がその目的を遂げる上で
大きく作用したものの中に、KKKがつい調子こいて
「おいニガーどもがなんかわめいてるよ、お前ら
全力で行くか?」とかやらかしたら、かえって
善良な一般市民がドン引きして「やっぱり我々は
何かとてつもなく悪いことをしているのではないか」と
自責の念に駆られたという、色んな意味で面白い
(本当は笑っちゃいかんのだろうけど)エピソードが
あるわけですが、不当な暴力は加えている方も
違和感や嫌悪感を覚えるものであり、やがて
正当な裁きを受けるというのもまた必然の理。
近代社会に生きる文明人という自覚を持ちたいなら、
思考停止に陥らないためにも常に「考える」という
態度を崩さないことが何よりも重要と言えましょう。

話は変わってキャストについてですが、耳慣れない
俳優、キウェテル・イジョフォーが主人公ソロモンを熱演。
経歴からすると数々の有名タイトルに名を連ねており、
繊細であり大胆であり情熱の溢れるソロモンを演じる
彼はここにきてその実力が爆発した感じでしょうか。
冷酷かつ色ボケな農場主を演じるのがマイケル・
ファスベンダーで、「危険なメソッド」のユング同様、
病的なスケベ野郎をやらせるにはまさにうってつけ。
奴隷制度に反対の立場を取るカナダ出身の
イモ野郎にはブラッド・ピットで、こういうキャラは
彼も嬉々として演じている感じがよく出ています。
ほぼ無名の新人女優ルピタ・ニョンゴは本作で
「綿花畑の女王」の異名を取る有能さを持ちながら、
嗜虐心を煽るその美しくも儚い姿と性格故に性的
虐待に晒される悲劇の黒人女性・パッツィを好演、
アカデミー女優賞をいきなりかっさらうのも納得。
「こいつポール・ジアマッティっぽいな!」と思ったら
やっぱりそうだった、気を抜くとそこら中で出演している
彼が扮する奴隷商人も、割かれた尺はごく短いもの
ですが妙に印象を残し、相変わらずいい仕事してます。

「ヘルプ」や「リンカーン」、変わったところでは
「ジャンゴ」と、黒人差別問題について触れた名作が
数多く世に輩出されている昨今、改めてその話題を
冷静に振り返ることができる時期に差し掛かってきた
という意味では、本作もまた観ておきたい一本でしょう。

人生の彼岸

本日は「グレート・ビューティー/追憶のローマ」を鑑賞
してきましたので、この作品のレビューをしたいと思います!

ローマに住むジェップはかつて文学史にその名を
残すとも言われた作家だったが、それも昔の話で今は
同じく過去の栄光にすがる仲間たちと共に、毎夜
豪奢なパーティーを開いては乱痴気騒ぎに興じていた。
そして65歳の誕生日を迎えた後、彼は自らの空虚な
生活と残り少ない余生にはたと気付き、新作の執筆を
思い立つのだが…というのがおおまかなあらすじ。

虚しい人生を享楽する作家の男と、その彼の隣を
通りすぎて行く数多の美しい女たちを、時には群像劇的に
ゆったりとしたテンポで描いていくイタリア映画…というと、
同じくイタリア出身の監督であるフェデリコ・フェリーニ作
「8 1/2」を連想するかと思われますが、実際作品の
質感や雰囲気はかなり似たものがあるように思います。

観光地としても名高いローマの美しい古都を背景に、
上流階級の者たちが夜な夜な繰り広げる饗宴から
彼らの行き過ぎた美意識が描写され、そこから
「きれいはきたない、きたないはきれい」という言葉が
浮かび、若くして精神を病み死に急いでしまう者が
いれば、齢百を越えても神への献身をやめない者もいて、
そんな人々の生き様を目にした、人生の半ばにいる者が
今の自分の立場をどう捉え、岐路をどう進むべきかと
苦悩する様からは「まだはもう、もうはまだ」という話も
垣間見え、即ち本作は人間とその人生が抱える様々な
「矛盾」を描いたストーリーと言ってもいいかもしれません。

そして善悪を超越し、なんとなく神に愛されてしまった
「聖人」こそがそれらの矛盾へ限りなく肉薄できる存在で
あり、主人公のジェップもまたそんな神に愛された一人に
違いないのですが、何が正しいのか悪いのか、美しいのか
醜いのかという判定は神の領域の話であり、聖人とて
水面の上を歩けるわけではなく、やはり一個の人間
として結局は駈けずり回って生み出した結果にあれこれ
理屈をこね、そうして自分を納得させるしかない…なんて
解釈を汲み取ったら、それこそ実存主義と実在主義の
対立みたいなテーマにも発展させようがあると思うのですが、
つまり本作を解釈一つで小難しい内容に変えてしまうのも、
「さっぱりわからん!」で一蹴してしまうのも、その全ては観客
一人一人に委ねられ、その合否を決める他者は介在しません。

この「見せるべき物は見せた、後はお前が考えろ!」ってな
本作の扱いが実に曲者で、「自由度が高すぎるせいで何を
やったらいいのかわからないクソゲー一歩手前のゲーム」
みたいな雰囲気も持ちあわせている分、アカデミーという
権威ある賞を本作に与えてしまったのは果たして妥当な
判断だったのか?というか、そうした「これ名作らしいよ!」
という色眼鏡をかけて鑑賞に臨むべきでは決してない内容で
ありながら、しかしそうした評判がなければまず劇場に
足を運ぶ機会を自分は作っただろうか…などという考えに
まで及んでしまい、本作に対し私が正しい解釈や正しい
評価を下せている自信は正直なところ全くありません!

ストーリーや作中にバラ撒かれた無数のメタファーに
対する細かい解釈云々はさて置いて、オシャレな
ビジュアルや気だるげな空気という、作風のスタイルや
センスも人によって伸るか反るか大きく違うと思いますので、
やっぱりなんでこれがうっかりアカデミー獲っちゃったのかよく
わからない、万人向けとは全く言いがたい作品だと思います…
第86回外国語映画賞ノミネート作品は、本作以外だと
「偽りなき者」しか観れていないのですが、これなら
あっちに投げた方がずっと納得いく結果だった気がする…
プロフィール

マイケル・チバ

Author:マイケル・チバ
シルバーレイン
マイケル・チバ(b30277)
薬師寺・米(b41960)
を経て、
現在はエンドブレイカー!
マーヴィン・ジェント(c06527)
にて稼動中。

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