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金はあった方がいい!

新作レンタル「ウルフ・オブ・ウォールストリート」を
鑑賞しましたので、本日はこの作品のレビューをば。

二十代の頃から株式投資の才に長けていた
ジョーダンは、ブラックマンデーを経験しながらも
妻・テレサの後押しで証券マンを続け、同じ
アパートに住む友人・ドニーと共に会社を持つに至る。
巧みなセールストークで数多の金持ちをも
食い物にする彼らは、一線を超えた違法な
商取引にも足を突っ込んでいく…というあらすじ。

マーティン・スコセッシ監督の最新作は、実在の
億万長者、ジョーダン・ベルフォートの回想録を元に、
金融市場の実態を赤裸々に描いたコメディ映画。

ブラックマンデーを経て、反骨精神を武器に、
「かき集めたクソを如何に宝石として売り捌くか」を
命題に掲げ、貧乏人からも金持ちからも平等に
大金を搾り取り、たった一代で莫大な資産を築き
上げたことにより、ジャーナル誌から侮蔑を込めて
「ウォール街の狼」と仇名されたことで、かえって
周囲から尊敬と羨望の眼差しで見られることになる。
そんな華々しい武勇伝に彩られた英雄の裏側は、
ドロドロしたセックスとドラッグにまみれていた…
ってな、まるで創作の世界から飛び出してきた
ような、我々の想像する「金持ち」のテンプレの姿を
形作っているジョーダンという男の半生が本作で
描かれていくわけですが、その手法やテーマは
スコセッシが映画監督として最もノッていた時期の
「カジノ」や「グッドフェローズ」に通ずるものがあり、
銃弾を金へ直接置き換え、結果流血の事態もなく、
これだけ刺激に富んだ映像を撮れるようになった
というのは、未だなお彼が成長を続けており、そして
「巨匠」と呼ぶに相応しい存在へ押し上げられた
証拠と言うことに、疑いを持つ者はいないでしょう。

「ウォールストリート」と言えばオリバー・ストーンの
代表作が存在するし、タイトルも踏まえ、関連作なのかと
思い視聴しようかどうか実は結構躊躇していたのですが、
そんなのは全くの杞憂で、同じウォール街を舞台にした
作品であっても、オリバー映画が持っている独特の「固定
観念の押し付け」とは縁のない、物事をありのままに描く
ことに徹し、それどころか陽気なチューンに合わせて
スタイリッシュなカットを連続させるいつものスコセッシ・
イズムが爆裂した作品に仕上がっており、結果として
「こんなに脳天気でいいのか」という危惧感を抱かせ、
或いは肉欲、食欲、薬の禁断症状が怒涛のように
押し寄せ、それでもなお全く何の疑問も抱かず、
無頓着に貪ることをやめないセレブたちの姿からは、
まるで吐いては食べるを繰り返したという古代
ギリシャの贅沢を想起させ、吐き気すら催させます。

だからこそ「誰だってお金持ちになりたいと思って
いるし、お金稼ぎ自体が悪いことじゃない」と前提を
置いても、物事と欲望には限度があって、違法なことに
手を出せばそれはそのまま後ろに回るし、けれども
富裕層が一人二人捕まったところで百人千人の
貧困層の腹がそのまま膨れるわけではなく、そして
貧困層に生きる人々も、誰もが金持ちになれる能力を
有しているわけではない…という多面的な観点を生み出せて
いるのと同時に、市場経済、転じて社会というシステムが
肥大化し、既に人間の手のは負えないレベルの魔物へ
変貌してしまっているという悲哀も浮き彫りにしています。

今回主演を演じたのが、スコセッシ作品では最早
お馴染みの顔となりつつあるレオナルド・ディカプリオ。
本作における彼の演技が非常に高いという評価を
得ていたのもこれまた「え~嘘だ~」と食指を
遠のかせる原因になってたりもしたのですが、これに
関しては本当ごめんなさいと謝らないといけない!
「ディパーテッド」あたりから彼が「キレ芸」を新たに
取得し、それが原因で彼の演技へ改めて評価の
目が向けられるようになったと個人的には思っている
わけですが、今回は素の演技力も底上げされ、
これだけで今までの彼の出演作の中で最高の
クオリティを保持していると言っても過言ではなく、
その上口の端からヨダレを垂らすヤク中のキチ演技
まで完璧に身につけてきたもんだから、図らずも爆笑。
「世間ではIKEMENで通ってるけど変な役ばっかり
やりたがる」という意味では、ブラピやジョニデと
肩を並べる名優の領域に入ってきたかもしれません。
ディカプリオの変人ぶりを押し上げているのに一役
買っているのは「よく喋るデブ」のジョナ・ヒルで、
彼のナチュラルに変人でクズでキチガイな感じが
作品の異様な空気にも貢献しているのは間違いなし。

飛び散る血飛沫、焼けつくようなバイオレンスの臭い
こそがスコセッシ映画というイメージで、好みで言えば
確かに「タクシードライバー」前後ということになるの
かもしれませんが、個人の好みや先入観を抜きに考えて
みた場合、本作「ウルフ・オブ・ウォールストリート」が
現時点で彼の最高傑作と言ってもいいかもしれません。
それぐらい出来が良かったし、面白かった!
市場経済原理の崩壊、というと「コズモポリス」を
連想し、向かう先は同じなのに作風としては全くの
対極を行く作品というのも興味深く、スコセッシ好きと
マネーゲーム映画好きってあんまり混ざらない
感じがするのですが、それだけに様々な観客に
広くアピールもできる映画なのではないでしょうか。
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俺の勘は当たる!

見落としている過去の話題作をチェックするに
あたり、今回鑑賞したのは「ヘッドハンター」!
本日はこの作品のレビューを行いたいと思います!

身長170cmに満たないことがコンプレックスのロジャーは、
リクルート会社で有能なヘッドハンターを勤めており、
美しい妻・ダイアナと共に幸せな暮らしを満喫していた。
しかし彼は面接相手の情報から”カモ”を割り出す
絵画窃盗犯であり、そしてまた豪奢な生活を維持する
ための借金が破産寸前までに焦げ付き始めていた。
そんなある時、妻の開いた画廊で知り合った男・
クラスは求職中であり、なおかつ祖母から受け継いだ
ルーベンスの名画を所持しているという、彼にとって
この上ない絶好の条件を持っていた…というあらすじ。

ノルウェーで製作されたという本作は、裏の顔を持つ
一流ビジネスマンが、更なる深淵に足を踏み入れて
しまい追い詰められていくサスペンス・スリラー映画。

家も女も金で買えると思っている、コンプレックスと
エゴイズムの塊のような男という「起」、そして実際は
愛を繋ぎ止めるために積み重ねてきた借金が既に
足を焼き始め、そのタイミングでブラ下がってきた
最高の獲物…という「承」まで、スリラー映画では
最早ド定番な流れを見せ、金と愛の間で苦しむ男の
中に垣間見えた人間性が思わぬ展開を見せる…という
「転」もまた、観客の十分に予想のつく範疇にあり、
じゃあ本作の一体何がすごいって、ここから単なる
エロチックサスペンスや精神的に追い詰めていく
サイコスリラーの類なんて生易しいもんじゃない、
「何考えてるのかさっぱりわからないガチキチVS
生き延びるためなら何でもする異能生存体」とでも
形容するしかない、トンデモ追跡ホラーバトルに有り!

「キチガイがなんで襲ってくるのかさっぱりわからない」
という、理由を敢えてぼやかすことで恐怖を増幅させる
ホラー映画における一つの手法が取られているのですが、
一方でロジャー役のアクセル・へニーという男優も
「絶対に殺されてたまるか!」と逃げまわる迫真の演技を
見せることで、この異様で超常的な世界観と観客を
かろうじて繋ぎ止めることに成功していると同時に、
一体何の映画を観せられているのかわからない戸惑いと
奇妙な高揚感を覚える不思議体験をさせられます。
そもそも終盤でコトの真相明かされたても結局
「いや、だからってそこまでするか!?ていうか
それって根本的解決になってませんよね!?」
というガチキチぶりが更に極まるだけなので、
やっぱりこの作品どっかおかしい!気が狂っとる。

そうして最終的に落ち着くところが「金を取るか愛を
取るか」ということと、「それぞれの真贋を見極める」
という、またまた月並みなところに戻ってくるのが
かえっておかしくて、その上でロジャーという人物に
対して一体どういう判断を下すのか、という点は
観客に全てを委ねるラストが好印象を残します。

悪事によって罪を重ねてきた男がガチキチに
絡まれることによって、文字通り糞の河を泳ぎ
血の海を浴びるという地獄のような悪夢の体験を
経て、「本当の自分」と「真実の愛」を得る結果に
辿り着いたことに対し、果たして本当に彼は現世の
罪を償ったことになるのか、それとも決して許される
ことではないのか、というのはまさしく神の領分の話
であり、人間の手で裁けるところにはないのですよね。

その、ノルウェーとデンマークを一緒に語ったら多分
すごく失礼にあたるとは思うんですが、デンマークの
名作映画「偽りなき者」でも「隣人がどこまで寛容で
いられるか」というテーマを訴えかけてきたのと同様、
「あくまで判断は個人々々に託す」とした上で、観客の
「許すという強さ」をスクリーンの向こうから見定めて
くるという、そんな気質を北欧映画からは感じます。

プロット自体はサスペンス・スリラーとして小さく綺麗に
まとまっている感じですが、スクリーンからほとばしる
わけのわからない勢いとエネルギーによって、わけの
わからない面白さに溢れたわけのわからない作品
ですので、是非大勢の人に観てもらって「なんだこれ?
なんだこれ!?」って言ってもらいたい一本でした。

コフィーの世界

かれこれ半年か一年ぐらいずっとレンタルリストに
放り込んでおいて、この度ようやく借りることが
できたソフト「コフィー」を鑑賞しましたので、本日は
この作品のレビューを行いたいと思いまーす!

救急看護師のコフィーは、売人の手によって妹は
麻薬漬けにされ、正義漢のボーイフレンドは買収に
応じなかったことで障害が残るほどの暴行を受ける。
何の罪もない善人ばかりが何故虐げられるのか―――
憤慨したコフィーは己の知恵と美貌を駆使して麻薬
組織に深く潜入し、大物幹部相手にも一歩も
ひるまず一人、また一人と惨殺していくのだった!
…というのがおおまかなあらすじ。

ブラックスプロイテーションの金字塔とも呼ばれ、
そしてまたその手のジャンルでは最早伝説的存在とも
謳われるパム・グリアが主演を務めている本作品。

何はともあれまずパム・グリアというキャラクターが
いなければ本作の魅力は語れないというぐらい、彼女の
存在が作品の価値を大きく占めているわけですが、
神が彼女に与えたもうたボインボインのおっぱいと
キュッと引き締まったお尻のメチャシコ度は恐らく映画
史上唯一無二と言っても過言ではなく、当時白人黒人
別け隔てなく観客は生唾を飲んだというのも納得。
そして憂いを含んだ表情から浮かべる哀しげな笑みは
何処と無く梶芽衣子のような「幸せになれない女」の
オーラを湛えていて、それらの武器をスクリーン上で
存分に発揮するだけの演技力も十分に持っているという、
まさに天が二物も三物も持ってけドロボー状態。

その一方で脚本や演出が彼女の才能に寄りかかって
あぐらをかいているのかと言えばそんなことはなく、
「妹の人生を台無しにされてブチ切れ金剛な姉」という
存在をスピーディに立ち上げ、物語の舞台を整えると
同時に観客を即座に物語へ入れ込ませるオープニングを
経て、細いタイトロープを渡るように、彼女が悪人たちを
相手に立ち回り二転三転する展開は手に汗握ること必至。
更には「組織の幹部を一人二人殺したくらいでは世界は
変わらない」という復讐の無常さをしっかりと訴え、
「映画だから許される閉じた世界の復讐譚」を確立し、
切ない大人のラブロマンスをも交えることで、最終的に
浮き彫りにされるのがコフィーの根幹を成す「純情さ」と、
まるでグラフィックノベルを読んでいるかのようなアンチ
ヒロイズムに溢れた重厚なストーリーで綴られています!
合間合間に特に意味もなく挟まるおっぱい露出シーンも
サービス精神に溢れていて実にブラボー!素晴らしい!

基本的にはセックスとバイオレンスにまみれた、まさしく
エクスプロイテーションムービー以外の何物でもないと
思うわけですが、娯楽映画としてそれ以上に何を望む?
というまさにお手本のような作品で、実に楽しめました。

で、余談ですけど、「コフィー」を観終わって、本作のコフィー、
「修羅雪姫」の鹿島雪、「ゼイ・コール・ハー・ワン・アイ」の
フリッガをタランティーノ自らがスクリーンに復活させたいと
願った、彼女たちのキャラクターが持つ魅力は痛いほど
わかったし、その上で「ぼくのかんがえたさいきょうのビッチ」に
(「レザボア・ドッグス」のブロンドまでついでにまとめて)
ブッ殺させる「キルビル」という映画は、本当にどうしようも
ないくらいオナニスティックな映画だったんだなあと
いうのもまた改めて実感させられてしまいましたとさ。

頭の中で掻け!

新作レンタル「セッションズ」を鑑賞しましたので、
本日はこの作品のレビューをしたいと思います!

6歳の時にポリオを患い、38歳の現在に至るまで
全身麻痺での生活を余儀なくされてきた作家・マーク。
彼はずっと抱えていた童貞喪失の願望や、「セックスと
身体障害者」を扱った記事を新たに執筆すること等が
重なり、セラピストを通じて「セックス代理人」を雇う
ことになるのだった…というのがおおまかなあらすじ。

実在の詩人の実体験を元に映画化されたという本作は、
人間が肉体という名の器とそこから生じる欲望に囚われ、
その先にある精神的な境地を模索するヒューマンドラマ。

手を動かすこともままならず、自慰すら満足にできないと
あらばフラストレーションが性的欲求に向かうのは当然
という状況を丁寧に描写するわけですが、射精欲求や
童貞喪失願望程度ならばかえって健全すぎるくらいだし、
それは身体障害者であっても、結局は所謂健常者と
何一つ変わることのない等身大の人間である、
という事実を提示していることにもなるわけです。

当然テーマとしては「何をもってして人間を障害者と
見るか」的な月並みなものにも転じていきますが、
そもそも男と女が一対にならなければセックスそのものが
成り立たないし、障害者も一人の人間とて介護の手が
なければ満足に排泄もできないとした上で、障害者も
それを自覚し、ハンデを埋めようと「もがく」わけです。
その展開を通じ、人間は結局みんな何処かが欠けていて、
それをどうにかなくすために一人一人が歩み寄り、
努力しなければならない…ってなこれも当たり前と
言えば当たり前な教えに帰結しているとも言えますが、
性の問題はそれこそ全く他人事ではない差し迫ったものだし、
赤裸々でエロティックな描写でドギマギしている心の
スキマにスーッと染みこんできて…これは…ありがたい…

そんな本作、ヘルパーも、そしてその彼らが介護する
障害者も決して皆が皆聖人君子の類じゃないんだよ、
というところから始まったりするわけですが、そういう
前置きをしないといけないぐらい主要人物全員が
画面から物理的にキラキラした美しいオーラを発して
いるようにも錯覚するぐらい綺麗に光り輝いていて、
自分みたいな小物にはクラクラくる物があるわけですが、
不思議と黒く暗い嫉妬心は湧き上がって来ないし、むしろ
「世界はこんなに優しい人たちで包まれていたのか」と
安らぎで心が満たされ、至る場面で涙してしまいました。
これはやっぱり性の問題といういささか下卑た、そして
全く他人事では済まされないテーマが観客の親近感に
作用しているに他ならず、その意味でも本作がまず
この内容を扱ったということが、宣伝的な面も含め、
大きな求心力となって一つの勝利を得ています。

内容が内容なだけに恥も外聞もあるものか!と
俳優陣が体当たりで演技をしているところにも、本作の
活き活きした瑞々しさが溢れている要因と思われますが、
件のセックス代理人・シェリル役としてスクリーンに裸体を
惜しげも無く晒すヘレン・ハントの美しさと言ったらもう!
きっと世界中の童貞が、こんなおかーさんに自分も
優しく手ほどきされたいと羨んだこと間違いなし!
いぶし銀の俳優、ウィリアム・H・メイシーが気さくな
神父を演じており、セックスの問題同様に「神様や宗教
だってそんな難しい話じゃないんだ」という姿勢を示して
くれるのも、心の重荷を軽くするのに役立ってくれます。

本作も観終わってしまえばそんなに難しいことでもなく、
当たり前の話だった…っていうのは、セックスや射精にも
通じることで、そんなつまらない一発の射精のために
人間はあれこれ延々と悶えるのだという意味でも、
改めて人間、或いは自分個人に向き合い直せる
素晴らしい映画だったと思います。オススメ!

聖なるエンジン

新作レンタル「スノーピアサー」を鑑賞しましたので、
本日はこの作品のレビューをしたいと思います!

地球温暖化への対抗措置として、人類は人工寒冷化
物質を大気に放つが、結果として地上は猛吹雪に
覆われ、生物の住めぬ死の惑星と化してしまう。
残された僅かな人々は、止まることを知らぬ列車
「スノーピアサー」の中で命を繋ぎ止めていたが、
そこは更に一握りの上流階級が先頭車両を専有し、
後方に押し込められた下流階級が劣悪な環境で
過酷な労働を強いられるディストピアを形成していた。
過去幾度となく革命が起こり、その度に粛清を
受けてきたこの狭い空間で、青年・カーティスもまた
民と共に立ち上がらんとしていた…というあらすじ。

ポン・ジュノ監督による、これもソリッドシチュエーションの
一つとして数えていいと思うんですけど、SFアクション
スリラーの本作品は、人類の存亡を賭けた方舟の中で
形成された、ディストピアの衰勢を描いたストーリー。

「温暖化をなくすために科学の力を借りたら人類死滅」
という展開を簡潔な説明台詞と共に冒頭三分ぐらいで
やらかしてくれるので盛大に吹くわけですが、「ああ、
そういうギャグなのか」と肩の力がいい具合に抜けるし
とっとと本編に移れるしで悪くない導入だと思います。

さて、最近で言えば「TIME/タイム」「ハンガーゲーム」
「エリジウム」と現実離れしたディストピアの寓話が
これでもかと世にポコポコ生み出されている中、
本作もまたその流れに正しく沿った内容となっており、
過剰なまでに露悪的・退廃的に描かれる上流階級と、
虐げられる下級層を描くことでヘイトを煽られ、逆襲に
転じる様を観ることでスカッとする娯楽作品である
という姿勢も、実に教科書通りな作りになっています。

序盤からほぼ予想のつく真相や、それを踏まえて
「こんな社会で生きていくことに何の意味がある!」
ってな葛藤と、そこからまた月並みなオチに落ち着く
わけですが、でも「スノーピアサー」という存在が、
矮小な人間の作り出した愚かな社会の縮図であると
改めて実感させてくれるこのオチ、嫌いじゃない。

温暖化だろうが寒冷化だろうが地球はただそこに
存在するし、そこで人間は自分たちが勝手に敷いた
レールの上で勝手に共存したりつまらない諍いを
起こしているだけで、地球からしたらそんなこたあ
知ったこっちゃないし、くしゃみ一つ起こした程度の
地震・津波が起きれば人類は簡単に滅んでしまう。
今この瞬間から再び46億年を経た時、人類がとっくに
滅んでいても地球は変わらない姿を保ち続けていること
だろうし、そうなると「自然を敬う」だの「人類希望の光」
だの言う話は人間の理屈でしかなく、やはり地球は、
自然は、「ただそこに存在するだけ」に過ぎません。
「スノーピアサー」はそんな地球の一歩引いた「愛」を
描いたストーリー…って解釈はちと飛躍しすぎか?

そもそも永久機関じみて動く列車という存在自体が
ファンタジーな産物なので、その前提の設定を
半分はギャグとして受け入れて笑えるかどうか…
っていうとこれも最近のディストピアもののハードルと
なっていると思うのですが、個人的には本作も
少なくとも期待していた額面分は楽しめました。

魅力的な廃墟

期待の新作映画「グランド・ブダペスト・ホテル」を
鑑賞してきましたので、本日はこの作品のレビューをば!

とある作家の偉大な著書「グランド・ブダペスト・
ホテル」の内容とは、同名の老舗一流ホテルを所有する
世界有数の資産家、ゼロ・ムスタファにまつわる
数奇な運命に基づいたものだった…というあらすじ。

独特の作風でカルト的な人気を誇る映画監督、ウェス・
アンダーソン最新作にあたる本作品は、数多の
人間が繰り広げるスリルとサスペンスに満ちたドラマ。

名も無き一読者が「グランド・ブダペスト・ホテル」と
銘打たれたハードカバーを開いて読み始めるという、
監督いつもの「この作品は寓話的創作なんですよ」的な
アプローチから始まるわけですが、行き詰まったある作家が
偶然にも資産家と出会い、そしてその彼が言うには今の
自分があるのは人生最大の師にして親友がいて…と、
二重三重の構造で初っ端から観客の足場をことごとく
入れ替えてくるものだから、一体誰に主眼を置くべきか、
話の方向性をどう見るべきかに戸惑うことしきり。

ある程度内容が掴める頃には、作家が狂言回しとなり、
移民のロビーボーイ・ゼロとその師であるコンシェルジュ・
グスタフが、莫大な遺産を巡る血なまぐさい陰謀に
巻き込まれていく様を描いていくのだとわかります。

「ライフ・アクアティック」「ファンタスティックMr.FOX」、
「ムーンライズ・キングダム」といった数々の作品で
「ハリウッド的アクション」をアプローチしてきた監督が
今回やりたかったことはサスペンス・スリラーなのだろうな
という意図がこの時点で汲め、二転三転する状況や、
愛憎入り混じった人間模様が織りなす暴力の臭いを
描ききり、その意味では大いに成功していると思います。

そうしてひとまずのハッピーエンドを迎え、若干淡白にも
取れるめでたしめでたしな幕切れを目にして、はて
この作品で本当に言いたかったこととは何なのだろうと
頭を捻った時、それこそ細く、しかし確かに作品に
しっかりと一本通った「芯」があることに気づくはず。
それは即物的にはっきり描くことが転じて暗喩になっている
「遺産」であり、本作は人間の間で「受け継がれていく物」、
「受け継がれていかなければならない物」の物語なのです。

歴史に残る作家と持て囃される者がいても、彼がその
立場にいるのは、金銭欲や戦争の暴虐にまみれ狂った
世界の中で必死に抗い、「希望の光」を心に灯し続け、
世代から世代へと受け継いできた偉大な先人が存在した
からに他ならず、その者たちこそ称えられるに相応しい…
この壮大な人間賛歌のストーリーを構築するため敢えて
複雑な構成を取り、なおかつ娯楽作品としても綺麗に
まとめ上げた監督の手腕には脱帽する他ありません!

人間が宇宙へと容易に上がる時代を目前に控え、
「人類の新たなステージ」を提示する作品も数多く見られる
昨今にあって、監督が本作で提示してきたのが「過去から
今に残さなければいけないもの」という「センチメンタル」
なのもある種のアンチテーゼとして機能しているのが
興味深く、監督自身はいつもの自然体で振る舞っている
だけなのかもしれませんが、どちらにせよ常に時代を
鋭く見極める鷹の目にも平服せざるをえません。

キャスティングは「アンダーソン・ファミリー」とでも
言えばいいのか、相変わらず彼の身内で手堅く
まとめられているのですが、しかしだからこそ無駄に
滅茶苦茶豪華な面子が揃っていて、エイドリアン・
ブロディやウィレム・デフォー、エドワード・ノートンらが
ストーリーに深く関わってくる一方、なんでもない
端役にもビル・マーレイにオーウェン・ウィルソン、
ハーヴェイ・カイテルにジェイソン・シュワルツマン。
更に主演陣には新顔としてレイフ・ファインズや
ジュード・ロウも迎えたことで、最早大盤振る舞いと
言うより無駄遣いの領域にすら足を突っ込んでいる気が
しますが、これだけ選り好みできるのは、監督が役者たち
からも高い評価を得ていることの裏返しと見てもいいでしょう。

これまで「家族愛」といったミクロなテーマに焦点を当てる
ことの多かった監督が、世代間に亘る壮大な作品を
描いたことで、その堂々たる存在感とオーラが今や巨匠と
言っても差し支えない地位を示しているようにも見えます。
反面、手の届かない何処か遠いところに行ってしまった
ような一抹の寂しさも覚えるわけですが、未だに成長を
止めない彼が一体何処まで高みに上り続けるのか、
次はどんな作品を作るのか早くも楽しみでなりません。

FxxKで全てを表現する男

新作レンタル「マラヴィータ」を鑑賞
しましたので本日はこの作品のレビューをば。

ブルックリン出身だという四人家族がノルマンディの
片田舎へ越してくるが、父親のジョバンニは実は
かつてマフィアのボスの一人であり、ファミリーを
売った裏切りが元で今はFBI保護下に置かれていた。
妻のマギー、長女のベル、長男のウォレンも彼の
暴力的な血を受け継いでおり、彼らの行く先に
トラブルの火種が尽きることはないが、ジョバンニの
首にかけられた多額の賞金を目当てに、殺し屋たちは
家族の足取りを確実に掴み始めていた…
というのがおおまかなあらすじ。

「レオン」で知られるリュック・ベッソン監督の撮った
本作品は、触れるもの全てを傷つけずにはいられない
抜身のナイフのような四人のキチガイ狂犬家族が
繰り広げるドタバタ・クライムアクションコメディ。

何故か生来人に好かれやすい、或いは人心を掌握する
術を知っている彼らが、どうにかしてカタギに溶け込もうと
努力するも、どうしても水と油のように相容れないという
皮肉や悲哀を込めた喜劇と、そうして過去に犯した罪の
清算からは結局逃れられない宿命にあるという、ヤクザな
生き様に引き戻される様をバイオレンスと共に描く悲劇で
構成されており、この「一見何の変哲もない隣人が実は
とんでもない○○だった」という手法や展開は「レオン」や
「96時間」でも見せた、まさにベッソンお得意のもの。

とは言え本作では多少勝手が違っていて、例えば
たまたま無垢な少女を匿ってしまっただとか、もしくは
最愛の娘を誘拐されてしまっただとかいう「やむを得ない
状況に巻き込まれる」、転じて「口実」や「正当性」が
ないために、キチガイ家族に関わったらカタギであっても
善人悪人別け隔てなくヤクザなやり口の食い物にされる、
という構図が際立ってしまい、そりゃまあ中にはカタギの
中にもずっとずる賢いヤクザな奴もいるけど、だからって
平気な顔して建物を爆破したり後遺症が残りそうなぐらい
鈍器で殴打してもそれは許されることなのか?ってなことが
先に頭をよぎってしまい、感情移入が今ひとつ薄い。

これは「運悪く地雷を踏んだら死ぬ」みたいな状況にも
問題があって、キチガイ家族であってもカタギにおイタ
したら相応のしっぺ返しを食らうという展開はあっても
良かったと思うし、一方で「こいつあかんやろ!死ね!」と
作中でも明確に言われている奴がお咎めなしにのうのうと
生き延びてしまうという結果も許せなくなるのは必然!
なのでもっと「悪人は悪人!」とコミカルかつ露悪的に
線引してしまって、色を明確に分けた方が良かったかと。

役者に関してはロバート・デ・ニーロが元マフィアの
おっさんという最早鉄板な主演に加え、敵であり
親友でもあるという渋い役どころのトミー・リー・
ジョーンズもこれまた鉄板、でも一番注目するべき
存在は実は本作一服の清涼剤である姉弟にあって、
ブチキレ暴力女と清楚で一途な処女の顔を併せ持つ
まさに現代風ヒロインなベル役のディアナ・アグロン、
天パのチビで腕っ節も今ひとつだが狡知に関しては
誰よりも長けるというウォレン役のジョン・デレオは
今後のハリウッドで更なる活躍を期待したい要注目株。

なんというか、こう、スコセッシとか、デパルマとか、
タランティーノとか、トニースコットとか、或いは
ガイリッチーとか、そういう路線やエッセンスを持つ
作品を作りたかったんだろうなっていう気持ちは
伝わってくるんですけど、良くも悪くも「あー、いつもの
リュックベッソンだわ」って今ひとつ抜きん出た物がない
中途半端な内容に落ち着いてた感じがします…
プロフィール

マイケル・チバ

Author:マイケル・チバ
シルバーレイン
マイケル・チバ(b30277)
薬師寺・米(b41960)
を経て、
現在はエンドブレイカー!
マーヴィン・ジェント(c06527)
にて稼動中。

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