スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

…ゴッサムを潰す!

新作「バットマン・ダークナイトライジング」を
鑑賞してきましたので本日はこの作品のレビューを。

ハービー・デントの死から8年の時が経過した。
ゴッサムは新たに制定された「デント法」により、
かつてない安定した治安を得つつあったが、
ジョーカーとの死闘、そして最愛の女性と
ハービーの死を受け、バットマンことブルース・
ウェインは心身に刻まれた傷から立ち直れずにいた。
一方、ゴッサムに並々ならぬ恨みを持つ男、
最凶の傭兵・ベインは地下に潜伏し、大規模な
テロ計画を虎視眈々と狙っていた…というあらすじ。

「メメント」や「インセプション」で知られる
クリストファー・ノーランによる「バットマン」
三部作の完結編とされる本作品は、その名に
恥じぬまさに集大成的な内容となっています。

執事のアルフレッド、ゴードン本部長、
ウェイン社の会長フォックスというお馴染みの
バットマンサポートキャラが登場し、
ハービーとレイチェルの死を絡めつつ、
今回はこれに加え、バットマンに憧れる
新米警官・ブレイクやキャットガールこと
セリーナ・カイル、そして最凶の敵・ベインとの
愛憎入り乱れた様々なドラマが展開し、そこから
ラーズ・アル・グールとの因縁さえ再燃します。
ここまで書いてわかる方はわかるかと思い
ますが、「ジョーカー」の描写が本作では全くと
言っていいほど存在せず、そのことがかえって
ヒース・レッジャーの死を浮かび上がらせ
観客が胸を痛めてしまうというのは余談。

肉体は既にピークを過ぎたバットマンが、
ボロボロの身体に鞭を打って人々のために
立ち上がるという構図はまさにフランク・
ミラーの「ダークナイト」リスペクトであり、
わざわざベインというキャラを持ってきた
だけある演出も当然され、おそらく原作に
慣れ親しんでいればいるほど楽しめる
内容になっている狂気の作りこみは今回も
健在なのですが、いささか詰め込みが過ぎて
脚本の奇をてらった展開にキャラが犠牲に
なってしまったという感もなきにしもあらず。

特に新米警官・ブレイクとトリックスター的
存在であるキャットウーマンに関しては、
「ダークナイト」にちなんで三代目ロビンこと
「キャリー・ケリー」の一人にまとめちゃった
方が良かったんじゃないかとか思ったし、
そうでなければこれだけ詰め込むんだったら
ラストの展開はいっそのこと唐突に例の
「鋼鉄の男」を出しちゃうぐらいやっても
良かったんじゃないかなーなんて。

モチーフを喪失したブルース・ウェインという
男がヒーローであるバットマンに戻りたがる
弱さ、言い換えるならば未だ成長の余地が
あるという描写や、DC世界の善良な住民たちが
彼らの「正義」を試されるという展開等、
ドラマ部分も大変見ごたえがあるのですが、
やっぱ約三時間の上映時間は長くて重いね!
前作ほどの余裕のない焦りが感じられる
作りや、リピート鑑賞には向かない重さが
色々惜しい作品という印象でしたが、でも、
三部作のトリなんて大体こんなもんだよね。
スポンサーサイト

私の隣に寝たまえ!

本当は「宇宙人ポール」と一緒に
借りたかった、「シャーロックホームズ
シャドウゲーム」のレビューを行います!

19世紀末、ヨーロッパは何者かによる
連続爆破事件に脅かされていた。
愛国者か、はたまたアナキストの仕業かと
メディアが騒ぎ立てる中、ロンドンの
名探偵、シャーロック・ホームズだけは、
悪の枢軸、ジェームズ・モリアーティ
教授の陰謀の一端だと看破していた。
しかしホームズの存在を危惧しているのは
モリアーティも同じことであり、彼は
ホームズのみならず、ホームズの親友である
ワトソンをもその手にかけようと画策する…
というのがおおまかなあらすじ。

長い間低迷が続いていたガイ・リッチーが、
名作家コナン・ドイルの手によって書かれた、
全世界で親しまれるキャラ「シャーロック・
ホームズ」を題材に、「アイアンマン」で
まさかのタナボタ的にヒットを飛ばした俳優、
ロバート・ダウニーJr.を主演に据えて撮った
映画がこれまた予想を遥かに超える大ヒット、
監督・役者もそのままに製作された続編の本作品。

なんていうかね、以前レビューした「宇宙人
ポール」同様に、タイトルやテーマこそ
「名探偵ホームズ」なんですが、作品が
前面に押し出してくるのはホモ・ホモ・ホモ。
これはもう観客が穿った見方してるとかじゃ
なくて、スタッフが隙あらばネタをねじ込もう
という態度が明白で、予告編にあったホームズの
女装ネタも結局ホモネタの範疇の中の一つ
でしかないとわかった時には頭が垂れました。

それ以外にも半分開き直ったようなヤケクソな
演出もてんこ盛りで、「名探偵」としての
ホームズは今回最早探偵としての枠組みを
超えてサイコメトラー並の能力を発揮します。
原作を台無しにしたクソ映画「フロム・ヘル」の
オマージュでもしてんじゃないかとか思ったり。
推理という意味では前作からお馴染み「推理式
格闘術」は更にマシマシ、変化球も交えて
観客は変な笑いを浮かべつつ楽しめるはず!
特に「一体誰と戦っているの…」という
人類には早すぎる高度なラストバトルは必見!
ホームズとモリアーティのバトルにおいては、
突然お互いに豆知識を振りまいて知的ロールを
はじめたり、オチの部分にかかると突然
思い出したかのように「シャーロック・ホームズ」
という作品のフリをするのも腹筋に悪い。

最後の最後で「これはコナン・ドイルの創作を
基にした映画ですよー」なんて駄目押しまでして
くるあたり、原作ファンが憤慨してもやむなしの
(最も、前作を踏まえて本作に臨んだならそれは
それで学習しない奴も悪いと思う)、悪ノリに
悪ノリを重ねた作品なんですが、ガイ・リッチー
ならではのスタイリッシュな映像技術と、鋼鉄と
火薬にまみれたマッシブな近代兵器の融合による
重厚な戦闘シーンの連続は見ごたえタップリで、
頭カラにして楽しめるエンタメ作品としては
この上ない出来に仕上がっているのも始末に悪い。

「ホームズ」という枠組みの中でできる最大限の
悪ノリ…いや、ギリギリアウトかな、この絶妙な
バランスで成り立っているというのが本作で、もし
次があったらそれは多分破綻する瞬間な気がします。
面白かったけど、面白かったけど次はもうなくていい!
お願いだからやらないでくれ!とは思うけど、
こんだけ面白いと次もやるんだろうなあ…やだなぁ。

山が…動いたーっ!

48の殺人技の一つ!風林火山じゃーい!
と言えばwebコミックで新連載が始まった
「キン肉マン」で久しぶりに使われ、
旧作ファンが感涙にむせび泣いたことも
記憶に新しい、当時リアルタイムでゆでが
影響受けまくっていたことも伺える黒澤映画
「影武者」ですが…いや、別にそれが理由って
わけじゃなくてたまたまタイミングが重なった
だけですが、とにかく鑑賞しましたので本日は
この作品のレビューをしたいと思います!
前置き長い!

武田家頭領・信玄は、野田城攻めの際、
敵の放った凶弾により斃れてしまう。
家臣たちは、御屋形様の「三年間は自分の
死を伏せ、国の地盤を固めよ」という遺言を
忠実に守るべく、敵のみならず味方をも
欺くため、兼ねてより密かに用意していた、
本来は磔にされるところを引き取った、信玄公
うり二つの罪人を影武者として立てることに
なるのだが…というのが大まかなあらすじ。

黒澤映画の中で唯一、歴史上実在の人物を
エピソードに取り入れたという、一大
スペクタクル巨編の本作品は、「影武者」の
タイトルが示す通り、古くから多くの創作で
扱われてきたテーマ「入れ替わり」を描きます。

「人」を守ることが「家」を守る―――
ただただ国の行く末を慮った頭領の意思は、
その死後も家臣たちに引き継がれ、それは
名も無き物盗りの心にまで響いていく。
人々が一丸となれたのは、他ならぬ今は亡き
御屋形様の人徳の成せる業である、という、
すでに姿を消してしまった信玄がストーリーの
進行と共にどんどん強キャラと化していくのは、
黒澤ならではの手腕と唸らされること請け合い。
元々が、織田信長が天下取りに気勢を上げる、
群雄割拠の戦国時代でも最も興味をそそられる
時期ということもあり、観客が各登場人物に
感情移入するのは全く難しいことではありません。

とは言え、史実を扱っている以上必ずしも
メリットだけがついてくるわけではなく、
避けられない予定調和も待ち構えているわけです。
キャラクター補正という意味では、主役である
「影武者」を食ってしまう勢いでうつけこと
ノブのキャラが立ちまくっちゃってるのもよくない!
彼の舞う「人間五十年」よろしく、兵どもが夢の跡、
諸行無常がテーマにあるというのは伺えるのですが、
今回はなんだか妙にキャラの掘り下げが甘いし、
そのくせ無駄に冗長な長回しがところどころ散見
され、全体的に薄くて淡白な印象を受けます。

致命的なのは、最も盛り上がるであろう、「影武者」が
己の使命を真っ当とする夜襲のシーンが、画面が
暗すぎてほとんど何やってるかわからないこと!
白黒映画の「蜘蛛巣城」においてはあらゆる映像
技術を盛り込んだマジックを見せてくれた黒澤が、
カラーにおいてはこんな至らない凡ミスを犯して
しまうのかといささかガックリさせられました。

黒澤自身が次回作「乱」のリハーサル用に撮ったと
言ってしまっていたというのも納得できてしまう
本作、ちょっと色気を出しすぎた内容かなーと
思えるのも手伝って、黒澤映画の中にあっては
結構微妙な位置づけにある作品だと思います。
黒澤映画っていうハードルが高すぎるだけだとも
言えるんですけどね、決して、むしろ全然映画
としての完成度は悪くない、観れる話なんだから。

ピザだー!

新作DVDがようやく借りれましたよ、
本日レビューする作品は「宇宙人ポール」!

イラストレーターのグレアムと作家の
クライヴの二人はオタクで大の親友。
地元イギリスで長年夢見てきたコミコンへの
参加を果たし、翌日は「UFOスポット」の
聖地巡りをしていると、なんと「ポール」と
名乗るリトルグレイと遭遇してしまう…
というのが大まかなあらすじ。

「ショーン・オブ・ザ・デッド」や
「ホット・ファズ」でお馴染みの二人組、
サイモン・ペッグとニック・フロストが
共演に加えて共同で脚本を執筆、これに
「スーパーバッド」で知られるグレッグ・
モットーラがメガホンを取り、コテコテの
SFコメディに仕立て上げた本作品。

しかしSF部分はさておき、観客の最も
気になる・期待する部分はサイモンと
ニックの扱いだと思うわけですが、
観客以前に本人たちがノリノリで
嬉々としてホモネタに興ずる姿は必見。
サイモン演ずるグレアムが他のキャラと
仲良さそうにしていると、ニック演ずる
クライヴが嫉妬するって演出まで来ると
妙に生々しくて怖いぐらいだよ!

そんな二人が、人間以上に人間に理解を
示す、フランク過ぎる宇宙人・ポールとの
出会いと奇妙な旅を描いたロードムービーの
体を成しているわけですが、内容自体は近年
よく見られる、ナードやギークの抱える
凝り固まった情念やロマンを、それとなーく
小ネタを挟みつつ描いていくストーリーで、
このどうしようもない感触は意外にも
「ファンボーイズ」が最も近いかもしれません。

「宇宙人を元の星に帰してあげたい」という
王道ネタは「スーパー8」にも通じるものがあり、
本作も「E.T」等のSF・スペオペ直撃世代が今の
映画を撮っているのだなという印象を受けます。
で、「E.T」のパロネタが随所に盛り込まれて
いる上、スピルバーグ本人が声のみカメオ出演
しているにも関わらず、製作や総指揮に彼の
名前が見当たらないのが逆に驚きというのは余談。
あのおっさん最近は若手にメガホン握らせて
自分の好きな映画撮らせること覚えただけに。

有名どころのSF映画を押さえておけばおいただけ
本作も楽しめるだろうなっていうのはご多分に
漏れずなわけですが…あ、以下ちょっとネタバレ。

「エイリアン・ハンター」、或いは「最強の地球人」
と言ってもいいであろう、「エイリアン」の
リプリーとして知られるシガニー・ウィーバーを
ラスボスとして配置してくるのは最高に吹きました。

内容自体は飛びぬけて珍しい物があるわけでも
ないんですが、オタク愛に溢れまくっているのは
本作も同じだし、あとサイモン・ペッグってやっぱ
いい役者だなあ…と思わずホロリとさせられてしまう、
テンプレながらも、或いはテンプレだからこその
ちょっとイイ話など、観ておいて損はありませんよ!

絶対に許さないよ!

キチガイ三連黒澤映画レビュー来たな…
ということで、本日レビューする作品は
「悪い奴ほどよく眠る」!

大竜建設との贈収賄容疑が囁かれる
日本未開発地利用公団は、よりによって
副総裁である岩淵の娘・佳子の結婚式の日に、
課長補佐の和田が警察の任意同行を受ける。
和田は保釈後、上司たちに言葉巧みに自殺へ
誘導されるが、彼を救ったのは意外な人物だった…
というのがおおまかなあらすじ。

シェークスピアの書く悲劇を下敷きにすることが
多い黒澤明が、今回は「ハムレット」から着想を
得て描いたとされる本作は、復讐の炎と純情な愛の
瀬に立たされ、引き裂かれる二人の男女を描くと
同時に、「生きる」のテーマにあったお役所批判の
色を何倍にも強めて痛烈に盛り込んでいます。

世間の日陰で生きてきた「何者でもない男」が
何年、何十年と泥土に身を伏し、権力者の背後に
忍び寄り静かに牙を剥く…というストーリーは、
昨今の創作業界において最早テンプレとも言える
展開ですが、本作がその下地を大きく作ったのも明白。

現在に至るまでの「復讐」をテーマにした様々な作品に
おける言葉を借りて言うならば、「『復讐』とは冷ます
ほど美味くなる料理だ」「人を殺して安眠できる奴は
そういない」といった具合に、本作は復讐を果たすまでの
過程はもとより、いやむしろ復讐者とそれを受ける者の
感情が移り行く様に重点を描いていくことが非常に秀逸。

復讐者は仇を討つため、それこそクソコテ並に怒りの
化身たるべく自らを戒め、言い聞かせるが、正常な
人間ならば「怒り」という感情は持続しないのが常。
そして様々な魑魅魍魎が心の底に溜めた、ヘドロの
ようにドス黒く、薄汚くて、鼻が曲がりそうなほど臭い
感情と、そこから巻き起こる憎悪の炎の上に垂らされる、
一滴のセンチメンタリズムの美しさといったら!

様々な感情の交錯と政治的な背景を交えた、緻密に
計算されたドラマはスリラーの一面も携えており、
今一つ煮え切らない、心に黒い穴を一つ残す意地の
悪~い結末はコーエン兄弟作品も連想させます。

黒澤作品のレビューでは既に定型のように口が
酸っぱくなるほど繰り返している気がしますが、
本作も現代における映画の規範や原点が見えて
くるということで、まごうことなきオススメの一本です。

よくあることだ

またまた引き続いて黒澤映画レビュー、
本日は「赤ひげ」を行いたいと思います!

長崎の遊学帰りである保本は、父の友人である
天野の言いつけで小石川養生所へと赴き、通称
「赤ひげ」と呼ばれる新出去定(にいできょじょう)
なる医者へ面会すると、彼の下で働くよう幕府から
辞令が出ていると寝耳に水で聞かされる。
将来の輝かしい出世街道を夢見ていたにも
関わらず、突然貧乏人の詰め掛ける劣悪な
環境で働かせられるとあってふてくされる保本。
療養所の禁止事項を思いつく限り犯すという幼稚な
手に出る彼であったが、赤ひげの指示の下で様々な
現場に立ち会うことにより、徐々に彼の医者としての
意識に変化が訪れはじめ…というのがあらすじ。

主演は三船演ずる「赤ひげ先生」となっていますが、
主人公としての立ち位置と出番はむしろ、赤ひげに
感化されていくはねっかえりのボンボン・保本。
実は鑑賞後に知ったんですが、この保本を演じて
いたのは他ならぬ若大将・加山雄三だったんですね。
こんな美男子だったとは知らんかった…

さて、黒澤のヒューマニズムが爆裂したという本作、
医療の現場を通して語られるテーマがこれでもかと
詰め込まれていて一言では表せないのですが、
「医は仁術なり」「病は気から」を実践し、心の健康こそ
何物にも変えがたい良薬であることを説いていきます。

しかしそれでも、どんなに善き人であろうとも、むしろ
善人ほど早くあの世へと旅立ってしまう…という
不幸なエピソードを怒涛のように畳み掛けてくる
前半戦は、一歩間違えると性質の悪いギャグのような
様相さえ見せているのですが、これこそが「赤ひげ」が
戦っている生と死の狭間にある世界であり、長く
身を置けば置くほどその感覚が麻痺していくであろう
環境の中にあって、人間としての感情をより一層
激しく燃やす赤ひげというキャラの強さも表しています。

また、「貧困と無知さえ克服すれば救える病人は
もっと増える」と赤ひげは嘆き、苦悩しますが、しかし
一方では富める者による、飽食の生活習慣病や歪んだ
環境で育ったが故の心の病、或いは災害による突然の
死に至るまで、現代社会にも通ずる、転じて人間が
絶対に超えることのできない「死」の壁とその哀しみを、
様々な視点を通じてありありと描いていきます。

根底にある確固としたテーマの徹底した描写も去る
ことながら、キャラクターの萌えキャラっぷりが
半端なくて、特に本作にはツンデレしかいねえ!
普段は寡黙で一度口を開けばお小言ばかり、
時には政治的に汚い手も辞さず格闘戦においては
まさかのボーンクラッシャーと化す究極の強キャラ・
赤ヒゲ先生も去ることながら、遊郭に拾われて
野良犬のように育てられてしまったが、療養所に
引き取られ徐々に本来の優しい心を取り戻し、
必死の介護をしてくれた保本に密かな好意を
寄せる12歳のロリ・おとよに関しては「それなんて
エロゲ!?」という展開に驚嘆させられるばかり。

既に映画監督として不動の地位を物にしていた
黒澤明が、その生命と私財の全てまでをも
投じて製作したという渾身の一作だけあって、
三時間という長時間映画にありったけの内容が
込められ、エンタメ性すらも発揮されているにも
関わらず全てにおいて緻密な動作を放っています。
活劇のようなわかりやすい華はありませんが、
「世界の黒澤」と誇るだけある彼の映画に対する
技術と情熱がヒシヒシと感じられる名作でした。
オススメ!

人の命は 火と燃やせ

なんか最近黒澤映画しか観てない…
本日は「隠し砦の三悪人」のレビューをば。

百姓の太平と又七は家を売り払ってまで具足にあて、
成り上がりを夢見て戦に参加するも、既に戦は終わり
彼らは敗戦国の雑役夫として扱われてしまう。
二人は現場から命からがら逃げ出すも、戦勝国の
山名家は秋月家のたった一人の跡取り・雪姫を
捕らえるため国境に強固な関所を構えており、
地元に帰ることもままならず立ち往生させられる。
途方に暮れた二人は盗んだ米で煮炊きしていると、
拾った薪の一本に埋め込まれた金を偶然発見する。
これなるは秋月家の隠した二百貫もの埋蔵金と
喜び勇む二人の前に、山賊のような口ヒゲを
蓄えた怪しげな男が突然現れ、埋蔵金を山分け
しないかという話を自ら切り出してきた…
というのがおおまかなあらすじ。

「七人の侍」、「蜘蛛の巣城」で時代劇の監督として
その名を不動の物とし、後には「用心棒」と
「椿三十郎」を世に送り出すことになる黒澤明が、
丁度その間に作り上げた映画ということで、本作も
また彼の足跡を語る上で外すことはできません。

何者にもなれない男二人が、偶然手にした金から
分不相応な夢に目覚めてしまう…というプロットは
いかにも名作西部劇「黄金」そのままなのですが、
ここに三船演ずる黒澤の作り上げたキャラクターを
放り込むことで赴きはガラッと変わってきます。

作風自体が全体を通してエンタメ性を追求しており、
昨今の時代劇のテンプレを築き上げたと言っても
良い「ある程度観客にも先の読める」安心感と
優しさを提供した上で、主演こそ三船演ずる真壁と
なっているものの、真の主人公である太平と又七の
「本当に余計なことしかしねえなこいつら、死ね!」と
思いつつ、そのどこか憎めない負け犬根性に
徐々にシンパシーを抱かせる過程は秀逸。

二人組はややもすれば「黄金」の主人公・ドブス並の
キチガイ野郎に変貌し、物語は一変殺伐とした内容に
変貌しかねないものを愛嬌にステ全振りし、終盤の
多少ご都合主義とも言える流れるような展開で綺麗に
オチをつける等、話としての破綻を抑えるべく、繊細な
タッチと大胆な力業を使い分ける手腕もお美事!

逃亡に継ぐ逃亡の果てに追い詰められていく人々を
描くロード・ムービー的展開はアメリカン・ニューシネマを
連想させますし、そもそもこの作品からルーカスは
「スターウォーズ」にかなりのインスピを受けたとのことで、
本作の存在がジャンルや時代を超えて後の映画に様々な
影響を与えたことがスクリーンを通じて伝わってきます。

実は今回、新作DVDを借りようと思ってDISCASの
レンタルリストに「シャーロックホームズ」と「宇宙人
ポール」を投げ込んでおいたのですが、代わりに
送られてきたのがこの一本で、イチャイチャする
太平と又七や、イカニモ系ガチムチ熊ヒゲアニキの
三船が腕組みする姿を見て、「これもホモか!」とか
そういう駄目な楽しみ方をしてしまったのは余談。
ほんとにどうでもいい。

冷酷で無慈悲

以前レビューした「M」と「ドッグヴィル」、
奇しくもこの二作品のテーマと通ずる映画が
あるということで、今回はその件の作品
「三文オペラ」を鑑賞しました!

あらゆる犯罪に手を染めているとも噂される
通称「匕首メッキー」は、すれ違った名も知らぬ女に
一目惚れをし、その日のうちに結婚式を挙げる。
しかしこのポリーと名乗る女性こそは「乞食王」の
異名を持つ乞食組合長・ピーチャムの一人娘で
あり、犯罪者と結婚した娘に対し彼は激怒する。
そして彼はメッキーとも裏で繋がっている警視総監・
ブラウンの元へ赴き、メッキーを捕まえ処刑に
かけなければ次の聖十字架祭で千人の乞食を
けしかけて祭を滅茶苦茶にしてやると脅迫する。
苦しい立場に置かれたメッキーは妻と子分を残し
地元を離れる決心をするのだが…というあらすじ。

フリッツ・ラングに並んでドイツ映画界の巨匠と
呼ばれるG・W・パプストが、音楽劇「乞食オペラ」を
原作に、当時まだ新しい技術だったトーキーへ
大胆に歌劇の手法をそのまま取り入れ観客に
大きなインパクトを与えたという本作品。

「人間に徳を教えたければまずそいつの腹を
満たしてやることだ」「生きていくっていうことは
他人を蹴散らし顔に唾を吐きかけることだ」という
まるでしっちゃかめっちゃかな歌詞に始まる本作は、
しかしまさにその歌詞が内容の全てを表しています。

ヤクザ者と、「彼がヤクザだから」と敢えて結婚を
受け入れる妻、ヤクザと裏で繋がる警視総監、
そして「最も貧しい者」を自称しながら、本当に
持たざる者からすら搾取をする糞野郎と、
本作には色は違えど悪人しか存在しません。
そんな彼らに翻弄されるようにして、弱き者たちが
一つにまとめられ、暴走していきますが、しかし
その向かった矛先もまた何の罪もない人々であり、
全てが何事もなかったかのように闇の中へ消えて行く。
結局生き残ってしまった悪人たちは高笑いをし、
「これで世の中はもっと良くなる」と口にはしつつも、
観客たちには何一つ変わったようには映らないという、
このむせ返るような茶番劇こそ、まさしくタイトル
「三文オペラ」にふさわしい内容なのではないでしょうか。

個性豊かなキャラクター群と歌劇のエンタメ性、
その端々で描かれる皮肉とブラックジョーク。
絶妙なバランス感覚で描かれるこの大袈裟な
茶番にこそ、人間の悲喜劇の全てが込められています。

犯罪者たちによる破滅型の恋愛というとアメリカン・
ニューシネマを連想させる作りにもなっていますし、
本作というよりは原典が秀逸だったのだろうと思える
ところもありますが、何処かで聞き覚えのある劇中歌が
流れるなと思ったら、映画「ウォッチメン」のサントラにも
使われた「海賊ジェニー」は本作が初出だということが
判明したりと、本作の存在が映画界に与えた影響も
また確かに、そして計り知れないと思います。

五欲

黒澤作品に触れていくにあたり、今回は
「蜘蛛巣城」を鑑賞しましたので、本日は
この作品のレビューを行いたいと思いまーす!

蜘蛛巣城に勤める鷲津、三木の二人は
突然謀反を起こした藤巻の軍勢の返り討ちに
成功するが、二人は城への帰途につく折、
「蜘蛛手の森」で不思議な老婆と出会う。
老婆から鷲津は「北の館を任された後、
蜘蛛巣城の主となろう」、三木は「一の砦の
大将となった後、息子が蜘蛛巣城の主と
なろう」という予言をそれぞれ受け取る。
ただの幻に違いないと笑う二人だったが、
全く予言の通りに城主から出世の旨を
伝えられると、彼らは奇妙な確信と同時に
疑心暗鬼に陥っていく…というのがあらすじ。

深い森と濃い霧のたちこめる、夢の中の
ような場所で、二人の戦国武将が謎の
「預言者」と出会うところから物語が始まる
という、黒澤作品にしては珍しくファンタジックな
アプローチが盛り込まれている本作品。

約束された出世の道がかえって疑いを呼び、
功を焦るがあまりに、自分の親とも言える殿や
唯一無二の友すらも裏切ってしまう悲劇は、
なんでも「マクベス」から着想を得ているそうで、
「リア王」に着想を得たという黒澤の後の名作、
「乱」の下地になったことも本作からは伺えます。

さて、三船演ずる鷲津が一国一城の主となるべく
もがくうちに狂気に囚われていく様が描かれていく
わけですが、実は手当たり次第にクソまみれになる
原因の半分くらいは彼の妻・浅茅にありまして。
このどうしようもない女狐クソビッチへ観客は
「こいつさえ早く斬っちまえばいいのに」という
怨念に近い苛立ちを覚えますが、これこそは
「椿三十郎」の「岡目八目」が如く、果たして我々が
鷲津と同じ立場であった場合、彼とは違い正しい
選択ができるか、と言えばそれはわかりません。
加えて、本作は人間の「後悔を積み重ねて生きて
いく生き物である」という一部分を切り取って見せて
いるに過ぎず、あれこれ行動した上でああだこうだと
理由をつけるしかない様を喜劇と断ずるところに、
転じて大きな悲しみ・哀しみが生まれます。

練りこまれた人間模様を描いた「乱」に比べると
どうしても見劣りをしてしまう部分はありますが、
当時の特撮技術をフルに活用しアイディアを
盛り込んだ撮影や、「俺を殺す気か!」と三船が
ブチ切れたというエピソードもあるらしい
ノースタントで挑む危険なクライマックスシーン等、
本作もまた黒澤を語る上で外せない一本でしょう。
プロフィール

マイケル・チバ

Author:マイケル・チバ
シルバーレイン
マイケル・チバ(b30277)
薬師寺・米(b41960)
を経て、
現在はエンドブレイカー!
マーヴィン・ジェント(c06527)
にて稼動中。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。