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たくさんの蝶が見れるように

おそらく今回が今年最後の更新になると
思われると同時に、今年を締めくくるに何を
観ようかってんで色々当たってみたら
近所の店でどれもレンタル中だったり
売ってなかったりで行きついたのが
本日紹介する「潜水服は蝶の夢を見る」です!

ファッション誌「ELLE」やり手編集長のジャン・
ドミニクは三週間という長い昏睡から目覚め、
医者から脳血管発作による「ロックトイン=
シンドローム」に陥った事実を告げられる。
全身麻痺によって喋ることも、指一つ動かす
ことすらできない身体になってしまった彼が
唯一できることは、左目の瞬きだけだった。
原語聴覚士の試みにより、瞬きのみでの
会話を修得した彼は、瞬きすること以外に
自分に残された想像力と過去の追憶を使い
一つの小説を創り上げることを決心する…
というのがおおまかなあらすじです。

ジャン・ドミニクという実在の人物、そして
その彼が書き上げた小説と同名のタイトルを
冠する感動のヒューマン・ドラマが本作品。
以前レビューした「ジュノ」同様、作品に恵まれた
第80回アカデミーの中にあって多数のノミネートを
受けたというだけあり、その実力は推して知るべし。

かつては即死と言われていたものの、
「医学の進歩によって」皮肉にも全身麻痺の身で
生き永らえることになってしまったドミニク。
それはさながら寺沢武一の「コブラ」に登場した
拷問、潜水服を着せられて真っ暗な深い水の
底へ沈められるが如く、彼を無限の虚無へと
引きずり込んでいくかに思えたが、「ジョニーは
戦場へ行った」のジョニーが頭を枕に打ちつける
ことでモールス信号を発したように、瞬きによる
コミュニケーションを覚えることで新たな希望を見出す。

「ジョニーは戦場へ行った」「ミリオンダラ・ベイビー」
といった、身体の自由を奪われた者の顛末を
描いた名作は多数存在しますが、それらの悲愴さを
全部目茶苦茶に叩いて打ち壊すような、「現実に
存在した」人間の力強さが本作には溢れています。
ジョンという人間には、幸いにも彼を支えてくれる
多くの友人や家族がいて、そしてまたジョン自身にも
元々才知が備わっていただけではなく、自分の身を
冷静に受け止めた上で、ユーモアを理解し未だに
性欲といったバイタリティにも満ちている。
これも実話物の名作「タイタンズを忘れない」で、
重要な試合を前にしながらも不慮の事故で
半身不随になってしまうフットボール部主将の、
「車椅子にだってオリンピックがあります」という
印象的な台詞が表すように、本当に前向きに
生きようとしている現実の人間ならちょっとや
そっとのことじゃクヨクヨしないんだ、ハンデの
ある奴の方が強いんだ、と教えられることしきり。

原作小説が世界を巡るベストセラーになったように、
「ベンダ・ビリリ」が世界に発信されたように、身体の
一部が機能しなくても人にはやれることがある。
障害者だから、健常者だからということではない
かもしれないけれど、五体満足の自分はまだ
何も成していない、まだ成せることはあるのでは
ないかとここ最近の視聴作品で打ちのめされます。

よし、来年こそは本気出す。駄目な台詞だ!
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ベンダ・ビリリは無敵だ!

「フリークス」と一緒に借りるのは正直どうよ!?
という感じもしないでもないけど、ようやく最近
新作レンタルに並んだんだから仕方ない、本日は
「ベンダ・ビリリ!~もう一つのキンシャサの奇跡~」の
レビューをしたいと思います!

本作はコンゴ民主共和国から突如発信され、
瞬く間に世界を駆け巡ったバンド「ベンダ・ビリリ」が、
その栄光を手に入れるまでの成長と苦難の日々を
綴ったドキュメンタリードラマです。

「ベンダ・ビリリ」のメンバーは、リーダーのリッキーを
はじめとして皆ポリオによって車椅子の生活を
余儀なくされている障害者か、もしくは路上生活を
強いられているストリート・チルドレンで構成されており、
そして突如世界でブレイクしたとは言っても、
トンカラ(段ボール)の上で一晩を凍えて過ごすという
彼らの日常からスタートし、そこから五年間の
積み上げを描いた本作は、華やかさとは決して
遠いシビアな内容がまざまざと映し出されます。

しかし、彼らのホームである障害者シェルターが
火事で全焼し、プロデューサー側の資金が尽きて
彼らが一時散り散りになるという悲惨な状況を前に
しても、作品内に漂う空気に絶対的な絶望感・悲壮感
が漂わないのは、アフリカという大地と人々の持つ
全てを受け入れて内包するかのような大らかさと、
「妻や子供たちを食べさせていかなければならない」
という最も現実的な問題に対するハングリーな姿勢、
そして「一度でも失敗・手を抜いたら次はない」という
徹底したプロ根性に他ならず、その底が知れない
バイタリティにはただただ驚嘆、観ているこちらの
方が打ちのめされること請け合いです。
すげえ、すげえよ…絶対勝てる気がしない。
何に勝つのかはわかんないけど。

「ベンダ・ビリリ」の5年間を追うという意味では、
彼らの本格的なレコーディング前に加入した、
当時若干12~13歳という少年「ロジェ」の成長を
描くというのもまた本作のテーマとなっています。
彼の持つ空き缶を加工して作ったオリジナルの
一弦楽器「サトンゲ」こそ、「ベンダ・ビリリ」に
強烈な個性とトラディショナルな味わい深さを
与えている立役者なのですが、一年、また
一年と歳を経ていくうちにあどけない少年は
どんどん腕回りが太くなり、背が伸び、一人の
「男」へと成長していく過程には感慨深さを覚えます。
同様に、機材や楽器が充実し、バンド自体の出す
「音」そのものがどんどん熟成していく様も鳥肌モノ。

なかのひと、彼らのアルバム「屈強のコンゴ魂」
自体は実はレコーディングの過程でこじんまりと
した内容にまとまっちゃったという印象を持っていた
わけですが、本作で「サトンゲ」の音の正体や、
歌詞から顕れる彼らの人生観を知ったり、そして
「屈強~」以降の更にパワーアップした、目茶苦茶
熱いライブ映像を見せつけられて完全にノックアウト。
思わず涙も溢れ出る最高にクールな姿に乾杯。

従来の型に囚われない自由奔放なスタイルという
意味でも、「こういうバンドもいるんだ」ということで、
音楽が好きな方は彼らのアルバムをまず一聴
してから是非鑑賞されることをオススメしたい!

一人への侮辱は全員への侮辱

こんな作品もかなり昔にDVD化されてたのね!
ってことで、「ジョニーは戦場へ行った」に
ある意味触発されて今回レンタルしたのが
カルト映画の雄と言われる「フリークス」。
本日はこの作品のレビューをしたいと思います!

大道芸の見世物小屋で働く倭人症のハンスは、
同じく倭人症の恋人・フリーダがいるにも関わらず、
「宇宙一の美人」が売り文句の美女・クレオパトラに
言われるがままに私財を貢いでいた。
しかしクレオパトラは筋肉男のヘラクレスと二股を
かけており、そしてまた彼女はあるきっかけから
ハンスが莫大な遺産を隠し持っていることを知ると、
彼を結婚詐欺にかけ謀殺しようと企むのだが…
というのがおおまかなあらすじ。

「魔人ドラキュラ」で知られるトッド・ブラウニングが
1932年に公開した本作品は、そのタイトルの通り
倭人症やシャム双生児、半身男にダルマ男と
畸形・障害者をこれでもかと出演者として銀幕に
並べ立てた作品で、これが原因で映画業界を
追われることになってしまったという問題作。
バッドテイスト・ムービーで知られるジョン・
ウォーターズの「ピンク・フラミンゴ」が
1972年公開ということで、その尖り具合が
如何に早すぎたかということも物語っています。

しかし本作が何故名作として今日語られて
いるか、ただのゲテモノ三文芝居に終始して
いないのかと言えば、劇中の「フリークス」よりも
むしろ脚本とそのキャラクターの造形に注目
するべき点があるからに他なりません。
中盤までのストーリーラインは、悪女が財産
目当てに結婚詐欺を目論むというありがちな
パターンではあるのですが、この結婚相手に
フリークスを当てはめてくるという、ある種の
禁じ手をやらかしてくることで精彩の放ち方や
物の見え方が全く異なってくるわけです。

本作においては「フリークス」の人々こそが
ごくごく自然な人間として描かれ、それこそ
ものの10分20分もすれば勝手に目も慣れて
くるもので、むしろ健常者の吐き気を催す
邪悪な振る舞い、これこそが監督の観客に
伝えたかった「本当に醜い化け物の姿」。
フリークスの人々の人間らしい振る舞いと、
心の醜い人間のあさましき行い、そして
その当然の報いと末路、これらの卓越した
脚本と個性豊かなキャラクターが物語に
様々な悲喜こもごもを与えているのです。

なかのひとはあんまり文学に詳しいわけでも
ないのですが、灰谷健次郎著「兎の眼」で
未だに強烈に印象に残っている台詞があって、
「人間として何かが欠けている者が障害者と
するならば、心に何かしらの悩みを抱えている
我々もまたその一人に違いない」といった内容
だったと思うのですが、無知が罪ではなく
無知が自覚できないことが罪なのだと
改めて実感させられることしきりな話でした。

まあ、なんというか、「これ面白いよ!すっげ
面白いよ!」とか声を大にしておおっぴらに触れて
回るような作品ではないのはわかりきってるんで、
超オススメ!とかプッシュすることもないんですが。
ジョン・ウォーターズやアレハンドロ・ホドロフスキー等に
先駆けて現れた、あまりに早すぎた才能と作品という
カルト好きな人なら観ておいて損はないと思います。
約60分でさっくり観れる尺なのもお手軽だしね。

神が人間を創り 人間が彼を造った

今月になって新作レンタルDVDとして
リリースされたのが、名作と名高い
「ジョニーは戦場へ行った」。
本日はこの作品のレビューを行います!

本作は第一次大戦に出征し、負傷により
両手両足、五感の全てを奪われた青年、
ジョニー・ボーナムの過酷な現実と、
過去の追憶が交互に描かれていきます。

「ローマの休日」で知られ、後に「パピヨン」も
映画化されることとなる脚本家、ドルトン・
トランボが自らの著書を原作に監督。
原作については、これが原因で「赤狩り」の標的に
され、禁固刑を食らったこともあるという曰く付きで、
本作においても痛烈な反戦メッセージが
これでもかと込められているのが特徴です。

観客の脳裏に焼き付くような印象を与える、
極端とも言える映像的なアプローチが衝撃で、
四肢をもがれたジョニーのいる現実では常に
モノクロ映像を、ジョニーが振り返る過去や
逃げ込む妄想の世界ではカラー映像を使い分け、
最早彼にとっての楽園は脳内にしかないという
ことをより一層引き立て、悲壮感を高めています。

脚本家ならではと言うべきか、文字をそのまま
映像に置き換えたかのような、演出に対する
気配りにも目を見張るものがあり、顔の映らない
乳母車を引く母親や、「戦場に行った夫が小さな
篭に入って帰ってきた」というジョニーの境遇を
そのまま表した都市伝説「バスケット・ケース」の
文字がチラチラと画面の隅に映るシーン等、
随所に暗喩めいたものが散りばめられています。
ジョニーの妄想に登場する、果たして実在した
人物なのか怪しい軍人、通称「イエス・キリスト」の
存在から察するに、聖書や戦中当時のアメリカ
事情等に詳しければ、もっと読み解ける
メッセージが含まれているのではとも伺えます。

ストーリーにおける彼の追憶や妄想の扱いに
ついてですが、これは四肢を奪われた彼が
ただひたすらにそれにすがるしかないという
前提がはっきりと描かれ、先日紹介した
「ポイント・ブランク」のように、「これはもしかしたら
夢なのではないか」という観客が抱ける想像の
余地がなければ、そうして同時に「ジェイコブズ・
ラダー」の如く、精神を蝕まれた彼の妄想は
次第に支離滅裂な物へと変貌していく。
トドメに「逃げ出す足もない」という自虐めいた
独白がジョニー自身から語られ、観客の方も
鎖でがんじがらめにされ、真綿で首を絞められて
いくような絶望感に駆られること必至です。
そして現実パートで描かれる、彼を人間らしく
扱うことによって彼に「希望を与えてしまう」
看護士の存在と、自分たちのやっていることに
目を背けるようにしてその芽を摘み取ってしまう
軍人の存在が、ますます鬱に拍車をかけ、
いよいよ画面から目を背けたくなります。

神とは何か、人間の尊厳とは何か。
本作に対する一つの「救い」として用意したのが
「ミリオンダラー・ベイビー」のような気もしますし、
前述の「ジェイコブズ・ラダー」の原型ともなった
作品のようにも伺え、本作が後の映画に多大な
影響を与えたであろうことは予想に難くありません。

以前紹介したサム・ペキンパーの「戦争のはらわた」
とはまた違った切り口で、戦争の狂気をこれでもかと
描いてコテンパンに叩きのめされる映画ですが、
こうしてレンタルDVDとして名作が復刻されたわけ
ですし、一度は鑑賞をオススメしたい!

9万3千ドル!9万3千ドル!

リー・マーヴィン出演の最高傑作としても
名高い「ポイント・ブランク/殺しの分け前」が
これまた最近になってレンタルDVD化していた
ということを知り早速レンタル、本日はこの
作品のレビューを行いたいと思います!
それにしても、過去の隠れた傑作が色々レンタルに
並ぶようになって、本当いい時代が来たもんです。

親友のマルに泣きつかれ、現金強盗に付き合わされる
ことになったウォーカーだったが、仕事が成功するなり
マルは彼を裏切り、銃弾を浴びせた挙句ウォーカーの
妻・リンを奪い取ると、そのまま行方を眩ませてしまう。
彼は本来手に入れるはずだった報酬の9万3千ドルと、
奪われた妻を取り返すためにマルの足取りを追ううちに、
刑事を名乗る男から罪のお目こぼしの代わりにマルの
所属する組織の尻尾を掴むよう依頼されるのだが…
というのがおおまかなあらすじ。

「あんた、リー・マーヴィンのファンだろ?俺もさ」という
「レザボア・ドッグス」の中でも印象的な台詞に象徴
されるように、タランティーノへ絶大な影響を与えた
とも言われている俳優、リー・マーヴィンと本作品。

そんなわけで当然、本作で強烈な印象を残すのが
リー・マーヴィン演ずるウォーカーという男なのですが、
これがまた凄腕の殺し屋というよりは「他人に都合よく
利用されやすい」性格のくせに「こすっからい犯罪には
よく頭が回る狂犬」という最も厄介なトラブルメーカー
タイプのキチガイさんで、これに加えて裏切り者の
マルから寝取られ妻、義妹から刑事風の男に組織の
幹部までどいつもこいつもキチガイしかいない
キチガイ天国ってんだから話がどんどんひどい、
そして面白い方向に転がっていかないわけがない。

演出においても「タフな男」リー・マーヴィンという
キャラクターが実によく描かれており、追っ手の
ヤクザや警官をやり過ごすためにじっと柱の影に
隠れているという、たったそれだけのシーンで
観客の脳裏に焼きつくような存在感をアピールし、
女にハンドバッグやら平手やらでしたたかに
顔面を殴打されても、決して瞬き一つしない、
肉体の反射すら凌駕する彼の徹底した
役者魂には思わず身震いすら覚えるはず。

「タフ」なんだけど「ダメな男」というキャラクターと
同様に、不安にさせられる脚本と構成も斬新で、
無音やスローモーション、フラッシュバックといった
技法をふんだんに使い、時として乱暴なまでの
ブッタ切りにシーンを飛ばす編集、様々な裏を
臭わせるキャラの造形等々、まるでふわふわと
感触のない雲の中にいるような感覚に襲われます。
これは見終わった後になって知ったことですが、
つまり「もしかしたら銃撃をされた男が今際の際に
見ている幻影なのかもしれない」という危うさを
表現しているという解釈もあるそうで、そう言われて
みればなるほど!と思わず膝を叩いてしまいました。
この危ういバランスで成り立っている作品に、
リー・マーヴィンという男を主人公にあてはめたという
大胆な英断や采配にもお見事の一言です。

キチガイ大行進のサイコサスペンス・スリラーと
言えば「ブラッド・シンプル」に端を発するコーエン兄弟、
前後不覚のストーリーや焼け付くような暴力の臭いと
言えば「ロスト・ハイウェイ」等のデヴィッド・リンチ。
どこかもやもやする作風や「間」の取り方、各演出にも
それぞれ似た臭いが感じ取れますので、それらの
監督作品が好きならば本作も是非オススメしたい!

一人が死ぬと 別の一人がその棺桶で儲かる

「リアル・スティール」と同日に観てきたのが、
次期アカデミー賞有力候補とも目されるという噂で、
以前から気になっていた「コンテイジョン」。
本日はこの作品のレビューを行います!

本作品は、全世界でほぼ同時に発生した謎の病に
より、人々が未曾有の大混乱に陥る様を描いた
スリラー映画なのですが、監督は「トラフィック」等
社会派ドラマに定評のあるスティーブン・ソダーバーグ。

そして本作に登場する「MEV-1」と名づけられた架空の
ウィルスは、咳と発熱という風邪に似た初期症状で、
人間の指と指の簡単な「接触」のみでいとも簡単に
伝染しながらにして、「感染者の20%は死に至る」とも
「世界人口の1/12が死滅する」とも言われる、
まさに思いつく限りの凶悪さを秘めた見えぬ殺し屋。

その「物に触ること」や「咳を一つする」ことすらも
憚られる凍りついた世界の中にあって、官僚や医者、
病気で家族を亡くした男、いたずらに風説を流布する
糞ブロガー等の群像劇が描かれていくわけですが、
本作において大きく評価するべきポイントは、物語や
特定のキャラクターに極力恣意的な感情を込めず、
あるがままの姿で描写していることにあります。

というのは、正体不明のウィルスに人がバタバタ
死んでいくだとか、その状況によって人々が恐慌
状態に陥るといった展開により、いたずらに観客の
好奇心や恐怖を掻き立てるというわけでもなければ、
対策に慌てふためく政府や、何もできずにただただ
斃れていく人々の無能さや虚しさを煽るわけでもない。
病から逃れるため、時として横暴・卑怯な手段に
訴える人が現れても、他人を蹴落とさなければ
生きられない「カルネアデスの板」的な状況にあっては、
「そりゃ誰だって自分が一番可愛いよね」と、怒りが
込み上げるよりは同情や共感を覚えるほど。
作中ではSARSや豚インフルエンザ、スペイン風邪に
果ては水俣病といった様々な天災・人災を例として挙げ、
目に見えぬ敵との闘いがつまり人類の当然の営みで
あり、そこには大仰な感動を強いることがなければ
無理に悲観することもないという、「メッセージ性がない
ことがメッセージ」とも言えるような力強さがあります。
この「メッセージ性」については、いささか茶化したような
ラストの「オチ」に集約しているところも良いですね。

話は変わって役者陣なのですが、これがまた
豪華な顔ぶれに加えて、そつのない役どころというか。
浮気が原因で第一号の感染者になる女に
グウィネス・パルトロウ、そんな女の冴えない夫に
マット・デイモン、政府高官として尽力するのが
ローレンス・フィッシュバーン、現場で寝る間も
惜しんで原因究明に乗り出す調査員には
ケイト・ウィンスレット、ネットを媒介に調子こきまくる
糞ブロガーにジュード・ロウと、こう書き出しただけで
わかる人なら「あー」とそれぞれのキャラ像が
簡単にイメージできるのではないでしょうか。

全体的に地味目ですが、明日には現実に訪れる
かもしれない静かなる冷たい恐怖を描ききり、
そしてまた役者の持ち味をいかんなく発揮した、
まさにソダーバーグの真骨頂とも言える本作品。
社会派ドラマ好きには是非オススメしたい!

アイエエエ!?「超悪男子」!?コワイ!

新作映画「リアル・スティール」を鑑賞して
きましたので本日はこのレビューをば。

時は2020年。
人間に代わりロボット同士がボクシングをする
という新しいスポーツに、全世界が熱狂していた。
かつてのボクサー、チャーリーは現在
ロボットの操縦者に転身していたが、それも
上手くいかず巡業の借金を踏み倒しては
方々へ逃げ回る惨めな日々を送っていた。
そんなある日、彼は元妻の死と、顔も知らない
11歳になる息子の親権の話を知らされ、
その少年・マックスを引き取りたいという
叔母夫婦に彼は10万ドルの取引を持ちかける。
夏までは旅行で家を空けるという夫婦のため、
少年をしばらくの間預かるという条件つきで、
まんまと前金5万ドルをせしめるチャーリー
だったが、その大金をはたいて買ったロボは
またしてもバトルで大敗を喫し、破壊されてしまう。
いよいよとなればガラクタ置き場を漁りはじめる
チャーリーだったが、そこでマックスが発見した
旧世代のロボが彼らの運命を大きく変えることに…
というのがおおまかなあらすじ。

ヒュー・ジャックマン主演、近未来ロボットバトルを
描いた本作品は、1950年代に書かれた小説を
原作に据えているとのことで、それこそ「こんな
小説あった!」「こんな漫画あった!」「こんな
ゲームあっ(ry」とも言い換えられる、手垢がついて
ボロボロになった内容なのですが、そのコテコテ
ぶりを包み隠さずさらけだし、男のロマンを
これでもかとぶっちゃけているのが最大のポイント。

「廃棄場にあったポンコツロボットが世界トップの
キリングマシーンに挑む」だの「それを通じて
長い間離れていた親子の絆を取り戻す」だの
王道に次ぐ王道すぎてストーリーについてはあんまり
言及できることもないのですが、チャーリーの
右腕にもなる息子・マックスのキャラクターが、
予告編だと「ちょっと塞ぎ込みがちな少年が
ロボットとの交流によって少しずつ心を開いていく」と
いうような印象を抱かせていたのに、実際は
「このクソ親父!俺を金で売りやがったな!」
なんて食ってかかってくる勢いの、したたかな
クソガキっぷりの造形をしていたり、チャーリーの
トレーナーの娘との恋愛描写は控え目だったりと、
悲壮感やラブロマンスといった余計な要素は
かなりブッタ切っていることが作品のテンポに貢献。
しかしこれ、ゲップが出るほど内容が男の子すぎて、
女性なんかは観てて終始あくびが出るんじゃないか?
とか変なところでハラハラさせられます。
それぐらい男臭い。

マックス少年に加え、ジャックマン演じるチャーリー、
それから物言わぬロボットボクサー「アトム」、
それぞれが三者三様の萌えキャラっぷりを
発揮しているので、バトルバトル!萌えキャラ!
バトル萌えキャラバトル!という交互に襲い来る
「燃え」と「萌え」のワンツーパンチで、バカ映画好きの
オタ系男子は漏れなくノックアウト必至の本作品。

「ロッキー」のようなスポ根映画に「バトルランナー」や
「デスレース2000」のようなルール無用の
近未来スポーツエッセンスを加え、21世紀の
VFXをあますことなく用いたらそのまんまの内容が
出来上がってしまいましたとしか言いようの無い
この作品、気になってる人は今すぐ劇場へ急げ!

素敵なひと夏の思い出

新作DVD「スーパー8」の鑑賞をしましたので
本日はこの作品のレビューをしたいと思います!

オタク仲間とつるんで映画を撮ることが趣味の
ジョーは、工場の鉄骨事故により母を失う。
それから四ヶ月後、未だにその影を引きずり
つつも映画製作は順調に進行し、深夜の駅の
シーンの撮影のため彼らは家を抜け出す。
そこで彼らは偶然軍用列車の衝突事故に
巻き込まれ、不思議な六面体を拾い上げる。
その事件から間もなくして、閑静な田舎町に
軍が介入をはじめ、そして奇妙な事件が
次々と頻発し、人々は混乱へと陥っていく…
というのがおおまかなあらすじ。

「アルマゲドン」の脚本にはじまり、「MIⅢ」や
「スタートレック」といった大作の監督を
務めたJ・J・エイブラムスが監督・脚本・製作、
スピルバーグも製作に参加したという
ジュブナイルSFファンタジーが本作品。

十代の赤丸ほっぺの少年たちが繰り広げる
冒険と未知との遭遇…という内容は「E.T.」や
「グーニーズ」等を連想させるいかにも
スピルバーグの得意分野といったイメージ
なのですが、とにもかくにも本作はその姿勢を
全く隠さずに21世紀の現代にあって全面に
押し出しているのが特徴で、どうにも垢抜けない
地味めな男の子の主人公、生意気なピザデブ、
火遊び好きのチビ、間抜けなノッポ、妙な
強キャラっぷりを発揮する主人公の父、
それからガキじみた男の中にあって妙に
大人びたヒロインと、そのヒロインのクソな父と、
これでもかとコッテコテな面子が満載。

しかしそのステロタイプが親しみやすいのも
事実なことに加え、それ以上に冒頭20分での
細かいカット割や脚本の練り込みが秀逸で、
あっという間にキャラへの感情移入の土壌が
完成してしまうその手腕には脱帽の一言。

そのあまりに手馴れすぎた感のある、テンポの
良い演出や脚本の妙は作品全体で見られ、
ともすればへっぽこアルバトロス系作品に
なりがちな、あるいはそれすらも意識した
「閑静な田舎町に次々と起こる事件」という
地味な内容を、息もつかせぬ派手な特撮と
様々な人間ドラマを織り交ぜることにより、
「次は一体どうなってしまうんだろう」と手に汗
握るワクワクに変えて観客へ提供してくれます。

しかし派手なVFXがそれなりに枠を占めて
いるものの、印象に残る、着目すべきなのは
やっぱり人間模様で、顔にどこか暗い影を
落としたヒロイン・アリスがとってもキュート。
街の存亡をかけた戦いの最中にありながら、
男のオタ同士で彼女を巡る熱い友情ドラマも
一層彼らを愛しく感じさせる要素でよし。
個人的に好きなのは主人公の父親で、
保安官補佐という立場のクセに「男」としては
この上なく強キャラ、でも「父親」としては
かなりダメな子、そして強キャラなんだけど、
大人故に今ひとつ事件の解決には貢献できてない
というポジションがかなりイケてなくて良し。
デニス・クエイドあたりが演じてたらもっと良かった
かなあ、と思うけどそれだと強キャラすぎるか。

それから「5分でわかるアルバトロス映画」とも
言うべきか、水野晴郎かエド・ウッドを連想させる
ような「映画本編」の存在と、「スーパー8とは
一体何だったのか」という衝撃の事実、トドメに
ご機嫌なメインテーマ「マイ・シャローナ」でエンドと
最後の最後まで手を抜かない、観客を飽きさせない
狂気の作り込みとサービス精神に感服。
本作を観終わった時、きっと誰もが「いいものを
観せてもらった」と思わされることでしょう。

「E.T.」に「第九地区」のグロ要素を加えて、
そこへ更に「リトル・ランボーズ」も組み込んで
二本の柱を両立させ最強に強まったという
印象の本作品、映画館で観とけば良かった…。
スピルバーグ作品好きなら文句なしにオススメ!

「魔女の季節」って書くとなんかのエロゲっぽいね

なんか優先度の設定間違えてたみたいで
ネットレンタルからうっかり送られてきて
しまったのが本日ご紹介する新作DVD
「デビルクエスト」でございます。

時は14世紀、十字軍遠征に参加していた
ベイメンとその親友フェルソンは、神の名の下に
行われる虐殺に嫌気が差し、軍を脱走する。
しかし祖国へ戻って彼らが目にしたのは、
至る所で死の病・ペストが蔓延する様であった。
やがて二人は脱走者であることがばれ、
貴族に捕らえられるが、枢機卿は彼らに
「ペストの元凶となる黒い魔女」を高山にある
大聖堂まで届け、裁判にかけて欲しいと願い出る。
一度はしぶるベイナンであったが、どう見ても
ただの年端もいかない娘の「魔女」を前に、
「公平な裁判」を条件に一行に加わることに…
というのがおおまかなあらすじ。

最近なにかとスキャンダルな話題で落ち目な
俳優、ニコラス・ケイジ主演の本作品は、
中世ファンタジックサスペンスホラーというべきか。
しかし予告編でやってた十字軍遠征で
襲い来る魔女を次々とブッ殺して回るっぽい
内容はご大層な編集詐欺で、十字軍を脱走した
兵士が「なんか魔女って言われてる小娘」を
連れてひたすら田舎道や森を進むシーンが大半。

神の名と贖罪の間で揺れ動く軍人、なんか
見た目普通っぽいけど腕力はゴリラ並の魔女、
ファシストチックな神父、あとその他大勢が
魔女って言われてる娘にあれこれ翻弄されて
観客ともども「こいつ本当に魔女なんかな」って
疑心暗鬼に苛まされていく話なんですが、
各キャラクターの掘り下げが今ひとつだからか
妙にコントっぽくてどうにも緊張感がない。

そして魔女なのかそうなのかとかすっぽかす
壮大なドンデン返しに発憤?噴飯?どっちにしろ
吹かされるラストの展開にズッこけること請け合い。
魔女かそうじゃないかそこは大した問題じゃないから!
あと、観客が必死になって忘れようとしていた
ペストの存在が強引に最後で関連づけられ、
医学に携わった故人全員に謝れ!心の底から謝れ!
と言いたくなるであろうことも保証します。
まあ、あとは…うん。タイトルがね…
邦題と原題両方合わせてひどいタイトルだよこれ。

もともとお話自体はどう転ぼうがスットコドッコイな
ことはわかっていたので(にしても予想の上を行く
ひどさでしたが)、お目当ての助演のゴリラ俳優こと
ロン・パールマンさえ見れたらそれで良かったの
ですが、そういう意味では概ね満足。
腕力はまず間違いなくゴリラ、そして横顔の
シルエットだけで彼だとわかってしまういささか
やりすぎ気味なゴリラっぷりに是非吹いていただきたい。
いただきたいって言ったけどロン・パールマンだけを
目当てに無理に観て1時間半を無駄にする作品では
ないのでそこは十分に覚悟して欲しい!

んで、本作の監督は経歴を調べてみたら
「60セカンズ」とか「ソードフィッシュ」の人らしくて。
あー…じゃあしょうがないかな…という変な納得を
してしまうとっても残念なボンクラ映画でした。

彼の敗北を喜ぶなかれ

サム・ペキンパーの隠れた名作として名高い
「戦争のはらわた」が最近になってレンタルDVD化
されていることを知り、早速鑑賞しましたので
本日はこの作品のレビューを行いたいと思います!

第二次大戦、敗色濃厚なドイツ軍のロシア侵攻。
ロルフ・シュナイダー下士官率いる最前線へ
新たに送り込まれてきた上官・シュトランスキーは
貴族出身の上昇志向の強い軍人であった。
現場を知り尽くした冷静・冷徹な軍人のシュナイダーと、
鉄十字勲章をひたすらに欲する事務官僚タイプの
シュトランスキーの間には次第に軋轢が生じ…
というのがおおまかなあらすじ。

巨匠、サム・ペキンパーが多額の予算を投じ挑んだ
一大戦争巨編は、斜陽の射したドイツ軍を舞台に
展開していきますが、短絡的にナチスに焦点を
当てたものではないのが、やはりそこはサム・ペキンパー
という監督の面白いところで、ドイツ軍の一枚岩では
ないと言うより、ナチス・貴族・軍人それぞれの
縦割り社会とそこから生じる様々な軋轢や衝突、
そして主人公・シュナイダーの視点を通じて戦争の
虚無感や狂気をまざまざと描いていきます。

本作を通じて監督が恐らく一番に表現したかった
ことは「敗北者の美学」なのではないでしょうか。
戦争という大局においては既に負けが見えている中、
果たして個人々々が成すべきこととは一体何か。
何よりも第一に己の出世を見据えた男、その権力に
犬のようにすがりつく男がいれば、ただひたすら
己と部下の命のために戦い続ける男がいて、
そして戦争という最中にありながら、次世代のため
よりよい世界を紡がなければならないと志す男もいる。
例えばこの時代の別の地で「戦場のピアニスト」があり、
後には「善き人のためのソナタ」があり、どんな時に
あっても人間が人間であろうとする力強さがある反面、
結局全ての物事は起こった後になって人間が
適当な理屈をつけるしかないのでは?そうして
戦争の大いなる愛と狂気が人間の感情を蝕んでいく…
という二面性の反復のつけかたが本作は素晴らしい。
ただ、まあ、ドイツのロシア侵攻を舞台に「敗北者を描く」
というテーマは、本国アメリカではウケが悪く
ヨーロッパや日本人のシンパシーを大いに買った
という当時の背景もまた頷ける話というのは余談。

話はキャストに移って、とにかく銀髪の老兵・
シュナイダーに扮するジェームズ・コバーンが
タフな渋い男を演じきっていてカッコイイの一言!
「ゲッタウェイ」等のスティーブ・マックィーンとは
似て非なる、その「男の世界」を体現したような
演技は男ならば誰しも憧れずにはいられないはず。
その鮮烈な眼差しや圧倒的な存在感は、
かつて西部劇のスターとして銀幕に君臨した、
似た経歴を持つクリント・イーストウッドにも
通じるものがあり、う~んとにかく渋い渋い。

作品にこれでもかと刻み込まれた強烈な
メッセージ性や、まるで息を吐くかのように
ごく自然に盛り込まれるバイオレンス描写といった
内容から、確実に万人向けではないし胸焼けを
起こす人もいるとは思うのですが、名作の名を
冠するには申し分ない珠玉の一本です。

こいつはキくぜぇ!

チャキチャキのB級作品を観たいなということで、
今まで未見だった「処刑ライダー」がDVDソフト化
しているということを知り鑑賞しました。
本日はこの作品のレビューをしたいと思います!

街の鼻つまみ者、暴走族のリーダーである
パッカードはケリーに対して偏執的な恋慕の情を
持ち、彼女に近づく者へ徹底的な暴行を加え、
かつては彼女の恋人、ジェイミーを密かに
殺害している過去すら持ち合わせていた。
ある日、流れ者のジェイクが街に現れ、ケリーと
親密になっていくことに怒り狂うパッカード。
しかし同時期、全身黒で固めたバイカースーツと
フルフェイスメットを纏い、同じく黒塗りのカスタム
ターボを駆る謎のレーサーが、暴走族のメンバーを
一人、また一人と公道レースで血祭りにあげていた…
というのがおおまかなあらすじ。

80年代のカーアクション・サスペンス映画の本作は、
なんかよくわかんないけど地獄の怨念が現世に
復讐の戦士として蘇りバカどもを次々とブッ殺して
いくという単純明快なボンクラなストーリーです。

しかし単純明快と言ってもそこはB級作品、
なんで復讐の怨念が現世に蘇ったのかは作中で
全くと言っていいほど説明はないし、脚本の説明
不足で話としての前後やストーリーのつかみ所が
わかりづらかったりでそこがまたたまんない。
基本的にはカッコイイ車一杯出したい!
あと全身黒づくめの謎のレーサーとかが
真っ黒い車を乗り回したり銃バンバン撃ったりしたら
カッコ良くね!?という中学生の発想みたいな
コンセプトがまず頭にあって、それを隠しもせず
一番に出してくることに好感が持てます。

B級の条件としての一つ、「役者が皆すごく
頑張っている」というポイントもキッチリ押さえていて、
駆け出しの頃のチャーリー・シーン(同年の主演・
公開作は「プラトーン」!)が主演を張っている他、
有名・無名に関係なく役者陣がクソ真面目に
各キャラの役を演じきっているところに好感その2。

キャラクターも皆テンプレ通りで、流れ物の主人公に
とりあえずヒロインっていうだけであんまりパッとしない
ヒロイン、暴走族のキチガイリーダー、手下のヤク中の
チンピラとかチビでメガネのメカニック、事件を追う
硬派な保安官とどいつもこいつもコッテコテ。好感その3。

淡々と復讐をテンポ良く終えて、なんか…えーと…
これは…ハッピーエンドでいいのかな…うん…?という
どうにも煮え切らない終わり方といい、何から何まで
どこを取っても「B級映画」としか形容のしようがない、
まさにキング・オブ・B級映画。
映画好きなら絶対観とけとかそういう作品じゃないのは
確かなんですが、「早い・安い・美味い」の牛丼の
ようなジャンクフードじみた内容が好きな方には
たまらない映画ではないでしょうか。

五拍子がなくったって

「タンタン」と同日に観て来たのが
ブラッド・ピット主演「マネーボール」。
本日はこの作品のレビューをしたいと思います!
ところで、タンタンは原語の綴りは「tintin」で
「ティンティン」という発音の方が近く、
そして「マネーボール」は日本語に無理矢理
訳すと………なんて酷い下ネタの前フリなんだろう!
以下あらすじ!

花形のスターになれると目された野球選手、
ビリー・ビーンは花を咲かせないまま引退し、
今は貧乏球団アスレチックスのGMを勤めていた。
そして2001年、地区優勝決定戦において、予算に
三倍ほどの差をつけられているニューヨーク・
ヤンキースを相手にチームは惜敗し、彼は
従来の運営に限界を感じはじめる。
そこで彼が目をつけたのは、トレード交渉のため
インディアンズを訪れた際、妙に印象に残った
チームマネージャーの一人、ピーターだった。
経済学を専攻していたというピーターが提唱する
のは徹底したリサーチによる「データ野球」。
統計による数値と理論に基づき、過小評価で
切り売りされている選手を買い集め、最低限の
予算で「勝てる」チームを再編しようとする
ビリーではあったが、立ちはだかる壁は厚く…

同名のベストセラー小説を原作に、「カポーティ」の
ベネット・ミラーが監督、ブラッド・ピット主演で
映画化した本作は、全く新しい方法でチームを
再編し、野球における前人未踏の記録すら築いて
しまった、実在の人物を元にした感動のドラマです。

「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」という
言葉があるように、スカウトの甘言を受けて結局
大成はできなかった男・ビリーと、人とは違った
切り口と視点から野球を見つめる男・ピーターという
二人の対照的な人物の対比、そしてそんな二人が
合わさり最強に強まったところが見所…と言いたいの
ですが、そんなに簡単な話ではなくシビアなのが現実。

データを元に「勝つ」以上に「負けない」勝負を
仕掛けるという、ある種の冷酷さすら感じさせる
スタンスはスコセッシ監督の描いた「カジノ」の
世界に通じるものを思わせ、当然そんなGMに
対し従来の方法・体制でやってきたオーナー・
スカウト・監督の風当たりは強くなるわけです。
物語として、事実として成功したという展開が
待っているのがわかっているにしても、新たな
スタートを切った序盤戦、歯車が合わずチームは
大敗を喫し、明日にも首を切られて路頭に迷う
かもしれないというビリーの苦悩と葛藤の日々の
描写は観ていてハラハラ、本当に辛い!
中盤、ビリーが自らの「覚悟」を見せ付けるため、
球団やその関係者も含めて大きなダメージを
負う決断を下すシーンは、ブラッド・ピットの演技を
含めて鬼気迫るものが感じられます。

そうした逆風の中、各球団からほとんど厄介払いに
近い形でかき集められた落ち零れの集団が、
全力で勝ちを拾いに行くという展開なんだから
これが盛り上がらないはずがない!
それでも、落ち零れの中からも落ち零れが出たり、
貧乏球団故に選手を遊ばせるスペースがなくて
泣く泣く落とされる者が出てくる…なんて展開が
合間合間に挟まってくるもんだからやっぱり辛い。

この、作品を支配する「球界における光と影」の
バランス感覚がすごく優れているのが本作の
良い点で、旧体制じみたスカウト等の運営方法を
批判する一方で、ビーンの取った方法が球界を
あらゆる意味で一新するような優れた手法ではない
とも描くことで、観客に議論の余地を与えています。
その上で最終的には「野球は夢を売る商売なんだ」と
〆るのが、ありきたりながらも、ありきたりだからこそ
涙を禁じえない作りになっています。

話をキャストに移すとして、主演のブラッド・ピットの他
助演にはチームの監督役にフィリップ・シーモア・ホフマン。
二人とも随分老けたな~…なんてのは「カウボーイ&
エイリアン」で皺と白髪の増えたハリソン・フォード然り、
時の流れを否が応にも実感させられるのですが、
着目すべきはピーター役のジョナ・ヒル。
誰だっけ、誰だっけと思ったら「スーパーバッド」の
主演で、同作の助演や、先日観た「ジュノ」、
それに「スコット・ピルグリム」に出演していた
マイケル・セラ同様、次世代を担うべきスターとして
順調に出世してんだな~と感心。
既に往年の名優としての貫禄を臭わせるブラッドに
対し、実にナチュラルな演技で張り合っています。

このベネット・ミラーという監督、実は本作も
合わせてまだ三作しか撮っていないという
チャキチャキの新人なのですが、「カポーティ」の
前例も含め今後の活躍にも要注目な逸材ですね。
本作は「インビクタス」や「ザ・ファイター」のような、
実話ものスポ根ドラマが好きな人には絶対オススメ。
ドラッカーちゃんとかナベツネ問題とか、日本人に
とってもかなりタイムリーなテーマや話題でもあるので、
今のうちに劇場に足を運ぶのもいいかもしれない!

びっくりフジツボ!

毎月1日は映画の日!というわけで
本日封切りの「タンタンの冒険」を鑑賞
してきましたので本日はこのレビューをば。

世界を股にかけ、幾多の事件を解決をしてきた
有名ジャーナリスト・タンタンはある日、ノミの市に
出品されていた、「呪われた一族」と噂される
アボック卿が有していた船「ユニコーン号」の
模型を一目で気に入り、即購入に踏み切る。
しかしこの模型に隠された「秘密」が彼を
大きな陰謀と事件に巻き込むことに…
というのがおおまかなあらすじ。

児童文学として幼少の頃触れた人も多いと思われる
(ってもなかのひとは実は読んだことないんですが)、
「タンタンの冒険」をスティーブン・スピルバーグ監督、
ピーター・ジャクソン製作、エドガー・ライト脚本という
まさに豪華過ぎる布陣で3Dアニメ映画化した本作。
エドガー・ライト作品でよく知られるサイモン・ペグと
ニック・フロストが声優として参加もしているのですが、
オープニングでキャストの名が一つ、また一つと
表示されていく中でこの二名は並んでクレジット
されるあたり「やっぱこの二人ホモじゃん」と
変なところで吹かされてしまうのはちょっとした小ネタ。

で、実際のところぶっちゃけてしまうと内容は
スピルバーグならではの「インディ・ジョーンズ」
シリーズに代表されるコテコテの冒険活劇モノ
(というか、ちょっと調べたら元々この文学と映画は
当時から類似性が指摘されてたのね)。
とにかくありがちなネタを詰め込んで子供から
大人まで安心して楽しめる…というのが実にミソで、
児童文学に慣れ親しんだいい大人の方が
かつての「ワクワク」を刺激され、郷愁と共に
興奮体験を楽しめるのではないでしょうか。
人死にが出ないにしても銃でドンパチやるシーンが
相当あったり、「ポーカーで目蓋を切られた男」だの
「『羊と仲良くしすぎて』羊飼いをクビにされた男」だの
道徳的に変なところで大人がヒヤヒヤさせられる場面が
あったりするところなんかからは、スピルバーグや
ピージャクやエドガーの「いい歳こいたガキ」の
悪ノリが感じられてそこもまたよし。

ある程度は先が読める脚本、それでいて琴線に
触れる燃える演出という王道展開も申し分なく、
本作の重要人物である「アドック船長」がアル中の
落ちぶれた身分から人間的に大きく成長していく
過程と、ユニコーン号の秘密を追う敵「サッカリン」の
真の目的とが重なった時、大きな感動が生まれます。
基本的にタンタンは完璧超人に近い厨キャラ
なんですが、それを全面的に押し出すわけではなく、
彼以上に有能過ぎる忠犬(厨犬?)スノーウィや
へっぽこ過ぎるトムソンとトンプソンの双子警官といった
個性的な脇役にも多くのフォーカスを当てることで、
物語はよりユーモラスな精彩を放つようになっています。

「ここまで来たか3Dアニメ!」という映像の狂気の
作り込みも凄まじく、空気中に舞う「埃」まで表現する
その様には思わず息を呑まされること請け合い。
スタントも特殊効果もカメラも自由自在、最早映像のことを
知り尽くしたスピルバーグがその腕を最大限に揮い、
縦横無尽にキャラクターと視点を動かすのを見て
「映像作品」としてのまた一つの新たな時代の
幕開けを実感させられました。誇張ではなくマジに。

唯一心残りな点は、更なる壮大な次の冒険を
臭わせつつ「えっこれで終わり!?」と割とあっけなく、
素っ気無く終わってしまうという贅沢な悩みで。
息もつかせぬアクションの連続、あっという間の
二時間でもっともっととせがみたくなる本作品。
十分な大作でありながら「まだもっとやれるだろう!」
という伸びしろを感じさせる作品でもありますので、
是非シリーズ化して欲しいタイトルですね。
プロフィール

マイケル・チバ

Author:マイケル・チバ
シルバーレイン
マイケル・チバ(b30277)
薬師寺・米(b41960)
を経て、
現在はエンドブレイカー!
マーヴィン・ジェント(c06527)
にて稼動中。

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