きよしこの夜

というわけで本日は
クリント・イーストウッド監督、
「チェンジリング」のレビューを
行いたいと思います!

1928年ロサンゼルス。
電話交換会社の主任を務める
クリスティーンはシングルマザーである。
ある日、彼女がほんの数時間日中に
他人の欠勤を埋めるため家を空けた
間に、留守番していた一人息子の
ウォルターは謎の失踪を遂げてしまう。
約半年後、彼女の懸命な働きかけと
警察の捜索によりウォルターが無事
発見されるが、クリスティーンにはどうにも
その少年が自分の息子だとは思えない。
身体的特徴にもあからさまな違いが
見て取れると関係者も口を揃える中、
事件は解決したという強硬な
姿勢を変えようとしない警察。
そして頑なに自分の息子を探してくれと
懇願する彼女に業を煮やした警察が、
ついに彼女にとった恐るべき方法、
そして思わぬ方向から明るみになる
背筋も凍るような事件とは一体…
というのが大まかなあらすじです。

グリム童話にもされている、ヨーロッパに
伝わる「取替えっ子」の伝承をタイトルとし、
アメリカ・カナダ間で実在した人物・実話を
元にしたという本作品。

描かれるのはロス市警の腐敗と怠慢、
信じられないようなとある事件、
それらを明るみにさせたひとえに息子を想う
一人の人間、女、そして母親である
クリスティーン・コリンズの力強さ。
特に母親役のアンジェリーナ・ジョリーは
ノーメイクのやつれた風貌で本来の美貌を
台無しにするが如き体当たりで演じており、
見事アカデミー賞に輝いたほどの折り紙付き。

母親以外のキャラクターの造形も良く、
自分の仕事に矜持を持つ教師や医者、
警察の体制に疑問を持つ牧師や弁護士、
そしてクリスティーンにほのかな好意を
寄せる電話会社の上司等が、
寄る辺なく一人戦うクリスティーンのために
無償の協力を惜しまない温かさが本当に心強い。

映画の玄妙を知り尽くした男、
クリント・イーストウッドなだけにキャラの配置
のみならず脚本の緩急の付け方や観客の
心の揺れ動きまで完全に掌握しており、
緩やかなオープニングから一転して
急転直下な展開や、観客の予想を
まるで見透かしたように二転三転させる
先の見えないストーリーは最高にミステリアス。

カメラワークについても面白い部分があって、
本来は長回しや奔放な撮影が主な監督が、
作中のとある一つのヤマ場に差し掛かった途端、
突然カメラの配置に気を配り始め、
頻繁にカットを変えることにより最高の
緊張感を演出させることに成功しています。

余談ですが、「ミリオンダラー・ベイビー」や
「グラン・トリノ」と同じく、今回も教会が物語の
舞台の一部であり、「神」や「天国と地獄」という
教化的な概念に苦悩するキャラが描かれており、
この想いは監督が作品と歳を年々重ねるごとに
強まっているようにも感じられます。

本作品は何もかもを計算づくで撮った
監督の映画キャリア全てを注ぎ込んだ
集大成的な印象が強く、その反動として
「グラン・トリノ」が好き勝手やらせてもらった感が
強いのかなーと思ったのも余談。

母親やそれを支える人々の力強さや
希望の光に対し、強すぎるほどの
人間の抱える心の闇がもたらす救いようの
ない事実が辛い・しんどい部分も多く、
鑑賞後に何とも言えない気持ちにさせられますが、
ただ一つ言えることは、間違いなく
オススメできる名作だということです。

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